生きる道を示してくれていたあなたが
私の元を去ってしまって
それから全てが崩れ落ちた
確かなはずの栄光も業績も
全てが過去になってしまった
夢で会ったあの人は
死んだと思えないほど綺麗で
優しい笑みを浮かべていた
私は安心した
まだ愛してくれているのだと
だけど哀しかった
目覚めた後に取り残された
もうあなたが抱いてくれない胸に
いつまでも恋しさばかりが
募り続ける
あなたが何気なく生きて
いつも傍にいてくれたこと
毎日同じ時を過ごしていたこと
それら全てが大切なものだった
大切なあなたがくれたものだから
今はそれを
あなたが生きていたときよりも
充分過ぎるほど知っている
エイプリルフールについた
君の嘘が忘れられない
「別になんとも思ってないよ。」
最後まで振り向かずにそれだけを言って
次の日に君は引っ越していった
#エイプリルフール
大切なものに囲まれたいつもの部屋のテーブルに着いて、キッチンから聞こえてくる料理の音を何気なく聞き流す。私の信じる人達と暮らす、守られた幸せの時間。黒子で顔の見えない板前が、料理を手にテーブルへやってくる。肉料理はもうすっかり馴染みの味になってしまったけど、彼の手にかかればいつでも新鮮味を忘れない。私のように肉料理に目がない人が多く住むこの地域では、今じゃ親しい人たちから、彼に料理してもらうためのお肉のおすそ分けを貰う。私からお肉を受け取った彼は、いつも決まって地下室で作業をするけれど、私は詮索しない。きっと幸せに水を差してしまうから。テレビをつけると毎日のように行方不明者の捜索願いが出ているけど、私は気にしない。幸せの為に。
――幸せの為に。
全てが無色に見える日は
全てが敵に回るから
我が物顔で隔たる奴を
傲慢に道を行き交う奴を
自分の人生のしこり共を
何気ないふりで殺したい
何ができるかも分からないけど
自分も他人もこの世のことも
何もまだまだ知らないけど
怖がってばかりの弱い奴だけど
頭の足りない甘えん坊だけど
ハッピーエンドを望むことを
許してください。