サチョッチ

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大切なものに囲まれたいつもの部屋のテーブルに着いて、キッチンから聞こえてくる料理の音を何気なく聞き流す。私の信じる人達と暮らす、守られた幸せの時間。黒子で顔の見えない板前が、料理を手にテーブルへやってくる。肉料理はもうすっかり馴染みの味になってしまったけど、彼の手にかかればいつでも新鮮味を忘れない。私のように肉料理に目がない人が多く住むこの地域では、今じゃ親しい人たちから、彼に料理してもらうためのお肉のおすそ分けを貰う。私からお肉を受け取った彼は、いつも決まって地下室で作業をするけれど、私は詮索しない。きっと幸せに水を差してしまうから。テレビをつけると毎日のように行方不明者の捜索願いが出ているけど、私は気にしない。幸せの為に。

――幸せの為に。

3/31/2023, 3:10:51 PM