神様が舞い降りて来てこう言った。
太郎と辰巳は大学生。同じ学校、同じクラスの幼馴染だ。
今日も仲良く一緒に下校している。
辰巳は時々おかしな質問して太郎を困らせる。案の定、今日もおかしな質問をしてきた。
「なあ、太郎。もし神様が舞い降りて来て太郎になんか言うとしたら、なんて言うと思う。」
「そんな恐ろしいこと考えたくないよ。聖書のなかで神様はアブラハムにこう言ったんだ。【あなたの愛する一人息子イサクを私に犠牲として捧げなさい。】怖いじゃないか。」
「でも神様はアブラハムを試しただけで、アブラハムが祭壇の上でイサクを殺して捧げようとした時、それをとどめて代わりの羊を与え、それを捧げるようにされたじゃないか。」
「そうだけど、自分は信仰の試練に耐えられないよ。アブラハムは息子のイサクを神様の奇跡で得ることができた。だから死んでも生き返らせてくださると考えた。またアブラハムに対する神様からの祝福はイサクを通してだという神様からの約束を信じていたんだ。俺にはなんの希望も約束もないじゃないか」
「なんで、地上が神の王国となるとき世界中かエデンの園のような楽園になって永遠に幸せに生きられるとい希望と約束があるじゃないか。」
「まあね。でも神様がきめた法律に従わなくちゃいけないんだろ。無理無理、いろんな可愛い女の子とエッチしたいし、タバコもやめられないし、浴びるほど酒を飲むのもやめられない。マジメに生きるなんて俺には無理無理。」
「そうなんだ。じゃあ、最初の質問に戻るけど、結局のところ太郎は神様になんて言われると思ってるんだ。」
「マジメに生きろ」
「アハハ、良いことじゃないか」
「だから、俺には無理なんだって。」
「なんでだよ。子供の時は馬鹿がつくほどマジメで優しいイイ奴だったのに。」
「なんだよ、今の俺は駄目なヤツなのかよ。」
「駄目なヤツとは思わないけど、もったいないなと思ってさ。」
「何が」
「あの、その。つまり太郎がマジメに頑張ってたときの努力とか、太郎のかけがえの無い命や人生。」
「あー、気持ち悪い。なんだよ。俺の命も人生もかけがえのないものだって。なんか気持ち悪い。」
その後二人は何も話さずに歩きました。なんだか気まずく感じたので、太郎は辰巳と別れて一人で先に家に帰りました。
その夜、太郎は夢を見ました。
天から神様が舞い降りて来てこう言う夢です。
「太郎、太郎。どうか未熟さを捨てて、生きつづけなさい。自暴自棄になるのをやめて、良い生き方を選びなさい。そうして私の心を喜ばせなさい。私のことを嘲っているこの世の中の支配者に私が返答するためである。太郎はたとえその生き方が辛くとも神から見て正しく生きている、あなたは正しく生きるものなどいないというが、と。」
太郎は目を覚まし、窓を開け、タバコに火をつけ、一服深くタバコを吸いました。大きく煙を吐くと、夜空に向けていいました。
「そっか神様が悪いわけじゃないよな。今の世の中のは邪悪な天使が支配してるから生きるのが辛いし、正しく生きるのが難しい。確かそれが聖書の教えてだったな。神様にあってみたいな。もし会えたらなんて言われるかな、きっと怒られるよな。何やってんだ、自暴自棄になって自分を傷つけて。頑張れって言ってくれるかな。」
太郎はタバコの火を消し、残りのタバコを箱ごとゴミ箱に捨てました。
誰かのためになるならば
ツチガエルは全身にごつごつとした縦長のイボがあるカエルで、イボガエルと呼ばれることもあります。捕まえると青臭いいなや臭いを出します。指には吸盤はなく、先端がいくぶん細くなっています。後足の指の間に発達した水かきを持ちます。
水辺からあまり離れることなく暮らしています。比較的きれいでしかも少し流れのある水辺を好む傾向にあり、そういう場所が減りつつある関東の都市部では急速に姿を消しつつあります。
体長は、雄で30mm~40mm、雌で35mm~50mm程度。体色はまさに土色ですが、背中の中央に背中線と呼ばれる白く細い線がある個体もいます。お腹にはまだら模様があります。
ツチガエルの王国に一匹の宣教師をなのるニホンアマガエルやってきました。
ニホンアマガエルは 体長は2~4.5cm程度と小型。 全ての指先に丸い吸盤があり、この吸盤で枝から枝へ飛び移ったり、ガラスの垂直面に張り付いたりすることができます。
ツチガエルたちには、自分たちにはない、小さくてツルツルした鮮やかな緑色の肌や指先の吸盤がとても神秘的に見えました。
それでそのアマガエルの話しも神秘的に聞こえました。そのアマガエルは神の言葉を聞けばツチガエルたちのコンプレックスであるイボを無くし、指先に吸盤を与え自信を持てるであろうと言いました。
アマガエルは言いました。
まず神を愛しなさい。そして他のカエルを自分自身のように愛しなさい。
他のカエルためになるならば、自分よりも他のカエルを優先しなけりばなりません。そうすれば願いは叶います。
それを聞いたツチガエルたちは、互いにを自分よりも優先しました。ツチガエルたちは相手のカエルを自分よりも大切にしました。それでもイボも消えず、指先に吸盤も付きません。ツチガエルたちはがっかりして落ち込んでいました。
それを見たアマガエルは激怒しました。それでこう言いました。
「あなたたちは信仰がたりません。もっと他のカエルを愛さなければなりません。例えば他のカエルにマッサージしてあげるとかです。」そういうとツチガエルたちにアマガエルは自分自身をマッサージをさせました。
月日は過ぎ、何年も経ちました。
ツチガエルたちは日に日に衰えてゆきました。特に熱心に教えを守ったツチガエルの姿をあまり見られなくなりましたツチガエルの王国に見られるのは、ほとんどがアマガエルばかりになってしまいました。
そんなツチガエルの王国を見かねた、トノサマガエルの王国さまが直々にツチガエルの王国にやってきました。そして言いました。
「ツチガエルの皆さん、よく聞いてください。皆さんはよく頑張ってきました。それでもアマガエルに惑わされています。他のカエルを自分自身のように愛さなければなりませんが、そのためには自分自身を適切に愛せなけりばなりません。ツチガエルの皆さんにはイボから嫌なニオイを出して敵から身を守るという、相手を傷つけない優しさがある。しかし、アマガエルの皮膚には毒がある。それもそれほど強い毒ではない。だからツチガエルたちはマッサージをさせてジワシワと相ツチガエルたちを弱らせたのです。皆さんには指先に吸盤はないが、優られた水かきがある。」
「神の言葉はこうです。
一人一人,自分の行いについてよく考えましょう。そうすれば,人と比べて喜ぶのではなく,自分自身のことを喜べます。」
「どうかツチガエルの皆さん自分自身を大切にして、自分自身を大切にするように他のカエルのことも大切にしましょう。誰かのためになるならば、自分自身をも犠牲にするのとは、自分がしてほしいように、他のカエルにもすると言うことです。例えば、プレゼントをする時、自分は甘いものが好きで、もらったらうれしいけれど、甘いものが苦手な相手には相手が好きなものをあげるなどです。」
そういうとトノサマガエルの王様は自分の王国へかえって行きました。
鳥かご
カエルくんのは空を眺めるのが好きでした。
明るく光る太陽。刻々と姿を変える雲などの空模様。カエルくんはまるで空は自分の心のようだと思っていました。また、この大きな空は世界中と繋がっていてと思うとワクワクしました。世界中の誰かも同じ空を見上げてる。みんなどんな思いで見ているのでしょうか。悲しい気持ち、楽しい気持ち、どんな空模様。きっとみんな違うけれど、自分と同じ一続きの空を見ている。なんだか、カエルくんには、それがとても幸せなことのように思えました。そしていつか世界中を旅して、いろんな生き物たちと仲良くなりたいと思っていました。
そんなカエルくんは空を飛びたかった。鳥が風を切って優雅に飛ぶ姿がとても好きでした。それでカエルくんは小さな鳥カゴに小さなミツバチを入れて飼っていました。
カエルくんの飼っているミツバチもカエルくんのように、よく空を見上げています。てもカエルくんと違ってとても寂しそうです。
カエルくんは思いました。きっと思いきり、この大きくて素敵な空を思いっきり飛び周りたいのだろうな。仲間と一緒に居たいのだろうな。
カエルくんは小さく、ごめんねと言いました。
でもカエルくんは大きな声で言いました。
「外は危険がいっぱい。君は小さいから直ぐに食べられちゃうよ。だからここに居るのが安全で一番良くて幸せなんだよ。」
カエルくんのは胸がチクリと痛みました。針が刺さったみたいに痛みましたが、気にしないようにしました。だってミツバチがいなくなるなんて、寂しすぎるから耐えられないからです。
今年の夏はとてつもなく熱く、カエルくんが狩りに出ても獲物が見つかりませんでした。幸い、ミツバチに餌の花はたくさんありました。
ミツバチは元気でしたが、カエルくんは痩せ衰えてゆきました。
このままでは、カエルくんは死んでしまいます。鳥かごの中のミツバチは言いました。「私を食べたら、きっと元気になってこの厳しい夏を乗り越えられるわ」
カエルくんは言いました。
「駄目だ、君は食べない。大切な存在だから。君のおかげで、今まで寂しくなかった。ありがとう」
そしてカエルくんはミツバチの居る鳥かごの扉を開けました。それでもミツバチは外の世界が怖いのか外に出ません。
カエルくんは言いました。
「さあ、外に出て仲間のところへ行くんだ。鳥かごの中にいても、鳥かごの外の世界にいもいつかは死んでしまう。一度しかない人生、大好きな仲間と一緒暮らして幸せになるんだ。鳥かごの外には危険もあるけど、幸せもいっぱいあるのだから。」
そう言うとカエルくんは意識を失ってしまいました。何日経ったかわかりません。石の上にいたカエルくん。ようやく意識を取り戻した。そんなカエルくんの身体の水分を生暖かい夜風が奪います。優しい月の光さえ今のカエルくんには辛いのです。カエルくんは近くの沼に這っていきます。思うように身体が動きません。
カエルくんは泣きました。でも涙が出ません。涙を流せないことがこんなに辛いとは思いませんでした。やっとの思いで、一雫の涙が出た時、口の中にとてつもなく甘いねっとりとしたものを感じました。
目を開けて見上げたカエルくは驚きました。
なんと目の前にカエルくんが
飼っていたミツバチがたくさんのミツバチの仲間といます。手に蜂蜜を持っていて、その蜂蜜をカエルくんの口に入れています。
カエルくんは、ありがとうと言いましたが、声にはなりませんでした。そしてミツバチは蜂蜜の入った壺を残して、ミツバチの仲間夜空に消えました。
それ以来カエルくんはミツバチにあっていません。それでもカエルくんは冬眠中の暖かい部屋の中でミツバチとの思い出
を胸に素敵な夢見るのでした。
友情
カエルくんには、友達がいました。
その友達はドジョウくんです。
二匹はいつも悪口を言い合っています。
ドジョウくんがカエルくんにいいます。
「やあい、カエルのおバカ。お前の母さんデベソ。お猿のお尻は真っ赤、カエルは恥かき、べそかけ、真っ赤。」
カエルくんはドジョウくんに言い返します。
「何を言う、ドジョウのアホ。ドジョウはヌルルヌ、泥の中。ドジョウの泥棒、ブタ箱へハイドウジョ」
いつも二匹は顔を合わせると悪口を言い合っています。カエルくんは悪口を言ってドジョウくんの顔が歪むめば、自分の勝ち。そういう遊びをしていると思っていました。
だから、一生懸命にドジョウくんが傷つくことを言おうとしました。カエルくんは悪いことをしているとは思っていませんでした。だって遊びだから。
ある時カエルくんはドジョウくんが、悪口を言い返してこない時が時々ある事に気が付きました。どんなにカエルくんがひどいことを言っても、ドジョウくんは少しニコッとして何処かに行ってしまいます。
そんなことが何度もあるので、カエルくんはたまりかねてドジョウくんに言いました。
「なんで、時々何も言わなくなるんだよ。」
ドジョウくんは答えます。
「だって、お前辛いことがあったんだろ」
カエルくんは言葉に詰まってしまいます。
「だからって、…。」
ドジョウくんは何食わぬ顔して、何処かに行ってしまいました。
確かにカエルの家は、毎晩お父さんがカエルやカエルくんのお母さんや妹に暴力を振るいました。カエルくんはそんな毎日が時々耐えられなくなりました。あんまり辛くて死んだら楽になれるかなと思いました。また、泣きながらお父さんなんて死んでしまえばいいと思いながら寝ることもありました。そんな日はお父さんが死ぬ夢を見て、泣きながら目を覚まします。そしてお父さんは死ぬほど悪いことしてない、死ななくていいと思うのでした。
そんな毎日でもカエルくんは明るく振る舞っていました。それでもドジョウくんにはわかったのでしょう。
カエルくんはその日以来、悪口を言う遊びがつまらなくなりました。なぜかドジョウくんも悪口を言ってこなくなりました。