紫蒼

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7/28/2022, 5:39:32 PM

ドン、ドン、と遠くから花が散る音が聞こえる。

ふと部屋の扉がノックされ、行かないの、と声がした。
布団からは行かない、とくぐもった声がする。
それから、扉の外の気配はいなくなった。

今日はもう帰ろう、とベッドの淵から腰を上げた時、すすり泣く声が聞こえた。


「祭りなんて、行ったって意味ないよ…」
「あの人はもう居ないのに。」


丸まった毛布に手を添えて、呟く。


「ずっと、待ってるよ」
「だから早く、会いに来て。」




花が散る音が聞こえる、あの神社で。

7/27/2022, 7:36:00 PM

神様が舞い降りてきて、こう言った。


「俺が君の神様になってあげる」

「だから、もう苦しまなくていいよ」

「だって、君を苦しませるヤツなんてもう居ないんだから」




***


ハッと目が覚めた。
久しぶりに神様の夢を見た気がする。


小さい頃、所謂ペットとして悪趣味な金持ちに飼われていた時があった。
痛くて、苦しくて、もう何が何だか分からなくなった所に一人の神様が現れて、「神様になってあげる」と甘い呪いをかけていった。
手のひらに乗せられて感じた初めてのピースメーカーの重みは今でも覚えている。



もう、苦しくない。
もう、痛くない。

だって俺は自由だから。



「かみさま…」


祈るように見上げてももう神様は居ない。
小さな小さな、俺の神様。
神様は二度も子供を助けないだろう。

月明かりが射し込む部屋で、そっと目を閉じる。
もう一度、眠ろう。
今度は神様の夢じゃなくて、しあわせなゆめを。