あたたかいって、なに
電気アンカーでなんとかあっためてるよ、どうしたって冷たい毛布
ほろほろほろほろ
君の瞳から零れ落ちた大粒の涙。
からからからから
次々と生み出される星のかけら。
星のかけらを纏った儚げな君が、どうしようもなく愛おしくて。
ちいさく震える君にそっとキスを落とした。
星のかけら #163
「……あ、」
ざあざあと重たい雨音が遠くから連れられてくる。
雨の放課後の昇降口は、遅い時間帯ということもあって、人の気配が少なかった。
ぴちゃん、と音がして前髪に降ってきた小さな衝撃。雨粒はそのまま前髪を伝って静かに地面に吸い込まれていく。
雨の世界に一歩踏み入れようとしていた俺は、慌てて
その一歩を戻す。…雨、降ってたんだ。今になるまで全然気づかなかった。
「…傘、持ってきてないや」
嘲笑するようにため息を落として、濡れた前髪に触れてみる。冷たくはなかった。たぶん手が冷たくなりすぎて、温度の感覚がバグっているのだろう。
…ほんと今日うまくいかない。
今日の出来事を思い出して、視界がしおしおと俯いていく。…そういえば今日、先輩に会えてないや。
今度は諦めたようにため息をついて、雨の世界に一歩踏み入れる。あーあ…、ほんと、さいあく。
「ちょ、みことくん、風邪引くよ」
「―――み"ゃっ!?」
後ろからくいっと優しく肩を引かれて、自分でもびっくりするような声が漏れた。
ばっと口を覆うけど、時すでに遅し。そろそろと振り返ると、驚いたように静止している先輩がそこにいた。
「…えっと、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど…」
「わ、わわわわわ…!!忘れて、忘れてくださいっ、お願いですから…っ」
顔がかぁーっと熱を持っていくのが自分でも分かって、必死になってわーわー言っていると、先輩がふっと笑った。
「ふ、ははっ、猫みたい。なかなか出ないでしょ、みゃって、ふ、あはは」
―――…あ、はじめて。
はじめてだ。こんなに先輩が笑うの。
本心なのか分からない笑顔じゃなくて、無邪気にくすくす笑う先輩に否応なく心の臓が脈を吐いた。
「って、そんな笑うことですか…っ?」
真っ赤な顔で先輩をぽかぽか叩くと、先輩は笑い声に吐息を混じらせて目元の涙を拭った。
「ごめんごめん。それより、みことくん傘ないの?入ってく?」
「はい忘れちゃって―――…うえ…!?」
“は、入ってく”…!?
思わずばっと反応してしまうと、先輩はまたまたくすくすと笑った。
「みことくんは反応が面白いね」
「っ、だって、相合傘…なりますよ…いいんですか…」
「なりますよ、って。いいよ、そのつもりで誘ったんだから」
君と一緒に 追い風 #162
(投稿したと思ってたのにぃ…、もう一度全部かきかきするのだるいので、空き時間にちょくちょく更新していこうかなと)
――――――カンッ
ぼやぼやとしていた朝の空気が、しゃんと張り詰めるのを身体で感じる。
矢を放った本人、ひかり先輩は静かに息を吐いて張り詰めた空気を現実に戻した。
俺、相原みことはこの朝の瞬間が大好きだ。
「ひかり先輩! すごい、ど真ん中!」
思わずぱちぱちを手を叩くと、先輩はフェンスの外側にいる俺に気づいて弓を下ろした。
「みことくん、おはよう。今日も早いね」
「おはようございます先輩。そんなことないですよ、先輩のほうがもっと早いじゃないですか」
ふふ、と柔らかく笑う先輩に心臓が儚く音を吐いた。
錆びついたフェンスのドアを後ろ手で閉めて、弓道場に上がる。錆びついたフェンスのドアが閉まりにくくなっているのを感じている、最近のこと。
誰もいない時間帯の弓道部の朝練は、先輩と共有できる唯一の時間だった。
冬晴れ #161
俺だけがいない先輩の世界で(題名候補)
(ここにおいての抱負決めました。書きたいものを書ける限り。ですかね。
…って、書く時間がなーい)
すいかとそこに振りかける塩、みたいな関係じゃないかな。
幸せと不幸せの関係は。
すいかはそのまま食べてもいいけれど、塩を振りかけることでさらに美味しくなるんだ。
でも塩はそのままじゃ食べられたもんじゃない。
要は、不幸はより幸せを感じやすくするいいスパイスだけれど、それは幸福に満たされているときだけってこと。
幸せとは #160