「……すき、だなぁ」
今日も部屋の片隅で闇に溶けて、堕落した一時を過ごす。
明日も朝早いんだ。だから早く寝ないといけないのに。いつから涙が頬を伝っていたんだろう。
手のひらで目元を拭う。決して綺麗ではない泥沼のような感情が吐いても吐いても止めどない。
もう口癖になってしまった言葉を息をするように吐き出す。
「ああ...しにたい」
─部屋の片隅で─ #134
(共依存とかの激重系が大好物です(重い過去など背負っていると尚良し)。その割には自分では書けなくて苦戦してます)
「別れよっか」
「...わかった」
“さりげなく放って、なんの抵抗もなく受け入れられた別れに”
“なにも考えられないまま受け入れてしまった、さりげなく放たれた別れに”
““ああ、真っ逆さまにおちてゆく””
─逆さま─ #133
眠りにつけないほど俺のことが心配だったらしい。
朝起きたら、枕元に浮かんでいたのは、半透明の恋人の姿。
安心しろって、と声をかける。俺もすぐそっちにいくから。
─眠れないほど─ #132
(半透明の恋人くんは自分の後を追いかけてくることを心配していたのではないかと思ったり)
夢と現実の差に苦しめられることなんてない。
夢の見方なんてとっくに忘れてしまったから。
─夢と現実─ #131
だってもし、さよならを言われてしまったら。
そんなことを考えてしまうんだ、人と関係を紡ぐときには。
深く踏み込まないほうが、楽なんだよ。
「...こんなこと人に言ったの、先輩がはじめてです」
冬の海は冷たい風を運んでくる。
「へえ、うれしいな」
先輩はひとり、納得したように笑みをこぼすと、果てしない青の世界から俺のほうに視線を向ける。
「...だから、わかんないんです。なんで先輩は俺に構ってくるんですか。あんな態度取ってるのに」
「ふはは。俺もわかんない。なんでだろーね」
「......はぁ?」
先輩のこういうところがきらいだ。
直球なときはとことんど直球なくせして、こういうときはひゅるりとかわす。
きらい、というよりはただ怯えているだけなのかもしれない。いつになっても掴めない先輩に。
「...無駄足でした。帰ります」
「えー帰んないでよ。せっかくの海なんだしさ」
「そんなとこに長時間いて風邪引いても知りませんよ先輩」
「そんなこと言わずに。一緒に風邪引こうよ、ね?」
「馬鹿なんですか」
「えー、今さらじゃない?」
それもそうですね、とぽんぽんと取るに足らない会話を投げ合う。
この気を変に張らなくてもいい空間は何気に落ち着けた。
深く踏み込んでいるわけではないからかもしれない。
「───なつめくんさ、怖いんでしょ」
冷たい波の音で空気ががらっと切り替わるから、また余計掴めなくて苛々する。この人のスイッチはどこにあるんだ。
「深く踏み込むって、あいてに自分の心臓差し出すようなものだしね」
心臓はあいての手のなかだから、さよならを告げられて捻り潰されるのもあいて次第。そういいたいのだろう。
それくらい、心臓は弱くて脆い。
「でもその恐怖に打ち勝って心臓を差し出してもいいと思えるあいてができたら、きっと。...ね?」
はっきりと言葉にしないで先輩は果てしない冷たい青の世界に視線を投げた。また先輩の気まぐれで言葉にするのが面倒になって放棄したのだろう。
「...肝心なとこ伝わってないです」
「あはー」
その恐怖に打ち勝って心臓を差し出せたなら、きっと、───連れていかれるのは見たこともない色鮮やかな世界だ。
─さよならは言わないで─ #130
(掴めない系男子の名前がどうしても思い付かない。"先輩"って名前出さなくていいから便利。……なんかないかな、名前)