しずく

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11/16/2024, 8:58:29 AM

大雨で早足の帰り道。 
ダンボールの中で縮こまってた子猫に足が止まったのは、なんとなく自分と重なって見えたからだ。
自分の存在をアピールして助けを求めようともせず、ただただ刺すような雨の下、小さくなっていた。
なにもかもを諦めて、苦しみに打たれて、死ぬことしか頭にはない。
俺はその日、何を思ったのか、気づいたらその子猫をそっと抱き抱えて足早にアパートを目指していた。


─子猫─ #116

11/13/2024, 2:18:05 PM

いえなかった。また会いたいなんて、言えそうもなかった。
「ん?どうしたの?」
きみがこっちを覗き込んでくるのがわかった。
わらえ、笑え。
得意でしょう?涙を、感情を、圧し殺して仮面を張り付けるのは。
それが唯一の特技でしょうが。
「ううんっ、なんでもない。心配かけちゃってごめんね」
言いながらこころのなかで嘲笑を漏らす。馬鹿だな。心配かけちゃってごめん、なんて。きみは心配してるわけじゃないのにね。もう会うこともないだろうしすぐ忘れられるからこそさらっと吐いた。
「...またそうやって嘘つく。嘘っていうか強がりかな」
「......」
ほら、見抜いちゃうんだ。
そしてそのきっかけだけで、また会いたいとか思っちゃう僕は酷く単純なのだろう。
「......あの、ね」
「うん、なぁに?」
きゅっと袖を握った僕に、一瞬少し驚いたような顔をしてふわりと砂糖菓子がとけるように笑った。
「また、会えたりする、かな」
「...! もちろんだよ。そのための連絡先でしょう?また会おう」
そう言って、きみはさっき連絡先を交換したばかりのスマホを片手に、今日はじめて見せる顔ではにかんだ。


─また会いましょう─ #115
(また書けなくなってる)

11/12/2024, 1:32:43 PM

得も言えぬ高揚と安心と快楽。
一度味わったらそのスリルに溺れていく。
無意識のうちに自傷を繰り返す毎日。
水を飲む感覚と同じように繰り返したリスカの跡。

苦しくて逃げ道が見えなくなったとき、最後の最後に残る希望が死なのだと思う。
未来の選択肢が削られて削られて、生きていくという選択肢すらつらくなる。
そんなときにほんの少しのスリルを効かせたそれに、中毒のように溺れていくのだ。



─スリル─ #114

11/11/2024, 1:28:54 PM

自由に空を飛ぶことなんて、できやしない。
空を自由に飛ぶように、生きたいように生きていける人というのは、翼を作るときに限りなく誤りが少なく作られた、ほんの一握りの人たちだけ。
私たちは今日も、壊れた翼を背負って生きている。


本来それは自由になるための道具なのに、私にとってはそれは余計なお荷物でしかない。
役割を果たさない翼は、叶うはずもない淡い希望をちらつかせてくる。
翼だということに変わりはないのだから、いつかは飛べるんじゃないか、と。飛べるはずのない、壊れているお荷物な翼なのに。
それって酷く残酷だ。


飛べない翼を私たちにつけるくらいなら、
空を仰がせて、飛ばせる気なんて更々ないのなら、
いっそ空を降らしてくれ。



─飛べない翼─ #113

(お題見て真っ先に思い当たったのは、そらるさんの“ツギハギの翼”でした。そらるさんのかく歌詞って綺麗で、すっと心に入ってくるし、なにより聴いていて落ち着くんだよなぁ)

11/8/2024, 11:44:31 AM

昔言い聞かされた、言い聞かせた言葉が今日も私の呼吸を薄くする。
“努力すれば報われる、報われない努力はまだ努力とは呼べない”
努力して、頑張って、頑張って。
そんなときに言われた「頑張れ」。
ねえ、もう十分頑なに張ってるよ。限界なの。なのにさらに壊れるまで頑なに張り続けろって、当たり前に使ってるようだけどさ、ちょっとふざけんなって思っちゃったな。

意味がないと分かっていても自分を守るために、自分を消さないために、努力して。
最終的には自分で「頑張れ」って追い詰めて、生きてることを許されたいがために自分を殺して。
意味がない。意味がないの。
こうして唱える「頑張れ」の呪文も、自分を殺しているのも、惰性で繰り返す呼吸も。
意味がないんだよ。



─意味がないこと─ #112

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