あとどれくらい無意味な呼吸を続けて、生きていなくてはいけないのだろう。
かといって、死ねる勇気なんて持ち合わせていない。
だけど消えてしまいたいとは思う。
車が走る音だけが遠くで聞こえる、静かな寂しさに包まれた部屋の勉強机の前にて。
─静寂に包まれた部屋─ #79
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最近自分でもやばいんじゃないかと思い始めてる。
でも逃げ出す場所もないし、どこなのかも分からない場所を目指して歩く手段しか持ち合わせていない。
もう逃げたいとは思うも、世の中には私より苦しい人が想像できないくらいいて、私の苦しみなんてちっぽけなものだ、って考えてどうやって生きたらいいのか分からなくなってる。
苦しみなんて人それぞれでその人にしか分からないものだよ、なんて言葉もあるけど、そんなの甘えじゃないかって思ってしまう自分もいるのも事実で…
「好きだったよ」
別れ際に落とされたその言葉に、どうしようもなく呼吸が苦しくなった。
─別れ際に─ #78
「お別れ、しよっか」
そんな予感はしていた。
「そ、だね」
僕は視線を落として、そう答えるしかないんだ。
あっさりと離れていく彼の背中がぼやけた。
ああ、通り雨でもいいから降って、僕を隠して。
この涙を涙だとは認めたくないよ。
だって、認めてしまうと彼との思い出が否定されていくようで。
─通り雨─ #77
「久しぶり、だな」
急な温度変化で、風邪のような熱っぽさが残る、ある秋の日。
「……なんで」
夜遅く、バイトが終わって、はやくアパートに戻ろうとしていたときだった。
秋特有の突き放すような曖昧な冷たさが、刺さる。
なんで、どうして、終わって一年も経つのに、やっと忘られてきていたのに。
「いつもバイトこんな遅いのか?」
俺のバイトが終わるまでずっとこの寒さのなか待っていたというの?
そもそもなんでバイト先を知っているの。
ぐっと唇を噛んで、重くなった脚を無理やり動かす。
お前が突き放したの、忘れてるとでも思っているのか。
「おい」
覆水盆に返らずなんだよ。
お前が終わらせたんだ。今更なんだっていうんだ。
そうやってこころのなかで並べるのは、自分に言い聞かせているのも同然だった。
そうでもしないと帰れそうになかった。
「なあっ」
「今更だろ。何? お前と話したくないし話すことないんだけど」
「……やり直したい」
「…は?」
どくん、とまず心臓が脈を打った。
ふざけるな、と次に思った。
「“親友”を壊したのも、“恋人”を壊したのも、両方失うことになったのも、俺が馬鹿で未熟すぎたからで、ずっとぜんぶ後悔してた…っ」
俺だって何度も何度も考えたよ。親友のままだったらって。こんな苦しい想いもしなかったんだろうなって。
「お前のそばで生きていたい。それだけでいいってやっと思えた」
だから。と彼は続けた。
親友が壊れて想いが通じた秋。
ふたりで暖めあった冬。
ふたりで散っていく桜を見に行った春。
普通の恋愛とは違うことを再確認させられた夏。
親友も恋人も壊れた秋。
三度目の秋は────、
─秋🍁─ #76
人はいつも切り取られた窓から見える景色だけで
世界を見ている
─窓から見える景色─ #75