好きになったのはいつからだろう。
幼馴染みと呼べる仲でもないけど、小さい頃からお互いを知っているから、お互いだけが自分のままでいられる場所なのだと思っている。
名前のつけられない関係。
この関係は心地よくも、辛くもある。
だってほら。
『俺、好きな奴いるんだけど』
で、始まっているライン。
最初だけそう書いてあるのははっきり分かってしまうから、なかなか開けないライン。
いつかくると思っていた。
お互いがなんでも話せるのはお互いだけ。
だからこんな話題もいつかくるだろうと。
でも、まだラインでよかったのかも、しれない。
直接相談されたりなんかしたら、どうしようもなく苦しくて辛いのを隠せる自信がない。
─開けないLINE─ #51
不完全な僕のまま、愛してくれた。
でも、不完全は不完全で。
結局は離れていった温かな体温。
あったものがなくなったという寂しさと、虚しさと、諦め。
最初からぜんぶ壊れるって分かっていたら、どれほどよかっただろう。
不完全なままじゃやっぱりだめでした。
不完全は不完全でした。
僕はいらない存在でした。
─不完全な僕─ #50
真夜中のコンビニは、どこか寂しいものを感じさせる。
と、人とすれ違ったときにふわっと香った、よく知っている香り。
思わず振り返った。
ばちっと視線があった。向こうもこっちを振り返っていたらしい。
「……やっと、また会えた」
夢でもいい。夢でもいいから、今は、今だけはこの夢から醒めないで。
─香水─ #49
「俺が好きなの、お前だよ」
卒業の日の人が掃けた、がらんとした教室。
窓の向こうで見える空は憎いほど青くて、でもところどころ雲があって。
そんな今日は儚い色を滲ませている。
「…え、」
最後だから言ってしまおうと思った。
どんな反応をされるかなんてだいたい予想はついていたし、卒業式しか選べない俺はどこまで弱いんだろう。
「なんも言わなくていいから。……ただ、俺がお前のこと好きだって最後に伝えたかっただけ。ごめん」
お前にしてみれば、伝えられて、何もなかったことにされて、きっと迷惑なだけ。
しかも、なにも言わなくていい、なんて結局逃げてるんだ。
拒絶されるのが怖くて、お前からはっきりとした拒絶の言葉を聞きたくなくて。
思い出は綺麗なまま閉まっておきたかった……なんてお前からしたら最悪な最後になって思い出なんか綺麗じゃなくなったんだ。
俺はどこまで自分中心なんだろう。
「……それだけ。引き留めて悪かった。じゃあ、な」
「ま、まって、」
心臓が脈を打ったのは、お前が俺の制服を掴んできたからだ。
「だから、なんも言わなくていいって。分かってるし、最後だからもう会わないから伝えただけ。そういうのいらないから」
「っ、だから自己完結すんなって、自分ひとりでぜんぶぜんぶ解決しようとするなって言ったじゃん…っ」
ずるい。またそうやって優しくするから、俺は……
「じゃあなんも言わないで、聞いてて。俺の結構前からの片想いの相手、……目の前にいる人、だったり、する」
ほんのりと染まった赤。
窓から見えるぬけるように淡い空。
教室の涼しげな香り。
最後にするはずだった今日は、きっと。
─言葉はいらない、ただ・・・─ #48
もう来ないで。
自分で放ったくせに、
自分も苦しめられるって分かっていたくせに、
エアコンの効いたひとりの部屋で、どうしても伝えることが許されなかった感情を今日もまたひとつ、募らせた。
─突然の君の訪問。─ #47