その太陽みたいな彼は、私にとって眩しすぎた。
無邪気な明るさは私の心を蝕んでいく。
お願いだから、こっちを照らさないで。
照らされる度に自分の汚いところが浮き彫りになる。
照らされる度に罪悪感が募る。
そんなふうに笑いかけてもらえるほど、
私はできた人間じゃない。
どうしてこっちを照らすの。
分かっているのに。
私はきみの隣にいていいほど綺麗な人間ではない。
分かっている。
もう来ないで。
きみの光を浴びていると、心が暖かくなって
溺れてしまいそうになるんだ。
お願いだから、もう来ないで。
─太陽─ #25
十二時の鐘と同時にきっと私は消える。
そう言った彼女の儚げな笑顔に、
どこかの童話みだいだ、と思った。
どうして、どうしてそんなことが分かるというの。
彼女の心臓の音が伝わってくる。
彼女はこうして今も生きていて、
それが一生続けばいいのにとか思ってしまった。
確かに未来に保証なんてないから、
今を大切に噛みしめた。
…ああ、これで何人目だ。
どうしてどうして。
僕と関わった人は皆この世界から消えていく。
彼女は違うと思ったのに。
美しい鐘の音と引き換えに
気づけば僕はまたひとりになった。
─鐘の音─ #24
きみとなら、つまらないことでも幸せを感じられたのに
─つまらないことでも─ #23
何度も何度も願った。
これが夢ではないことを。
もし夢なのだとしても、覚めない夢だってあるってことを。
だけど、それは届かずに終わってしまった。
目が覚めるまでにやりたかったことがたくさんある。
例えば、例えば……
あれ?
俺、なにがやりたいんだっけ。
こんなところで、ひとりでなにをしていたんだろう。
─目が覚めるまでに─ #22
藍色の空にぽっかりと穴が空いたように浮かぶ、白く光る儚げな月をぼんやりと窓越しに眺めていた。
白で設えられたここに慣れてどのくらい経つのだろうか。
こころがこんなにも痛むのは、知らぬ間に浮かんだあの月のようなこころの穴のせいだ。
─病室─ #21