出たくて出たくて、でもどう足掻いたって出れない鳥かご。
飼い主の手によって丁寧に過保護に育てられた小鳥はいつからか反抗心を持ちました。
飼い主が作り上げたかったであろう、大人にとって都合の“いい子”には育てることができなかったのです。
小鳥は無表情で飼い主の言うことに頷きます。こころのなかでは反抗心を募らせたまま。
ここから出せ。
私はお前の操り人形ではない。
上から目線のその言動、何様だ。
私の人生は私が決める。
その小鳥は壊れかけていた金具を破り外の世界へと飛び立ちました。そこにはただただ広がる解放感がありました。
翌朝、鳥かごから数メートル離れたところで見つかったのは、すっかり弱り果てた傷だらけの小鳥でした。
─鳥かご─ #13
それはかつてどこかで嘲笑った友情だった。
友情や絆なんて上辺だけの綺麗事でしかなくて、
脆くて、
儚くて、
消えやすいもの。
そう心のなかで嘲笑ったはずだった。
なのに、なのに。
…ああ、そういうこと。
友情とか絆って、
脆くて消えやすくて消えやすいものだけど、
乗っかってしまえばそれは
暖かくて、
くすぐったくて
毎日に色を落としていくもの。
すべてが全て上辺だけの綺麗事ではないと知った。
それはかつてどこかで嘲笑った友情だった。
─友情─ #12
頑張って、努力して、ようやく花が咲いたとしても。
結局は枯れちゃうんだよ、みんなみんな。
花が咲いたことを喜んでも、やがて枯れて花びらが落ちてしまうことを考えて“今”を十分に楽しめない。
そうやって、せっかく咲かせた花を十分に楽しめないまま私達はやがて枯れて死んでいく。
─花咲いて─ #11
思い浮かべては消して。
書き換えたい過去はキリがなかった。
忘れたい過去は思い浮かぶのに、
もう一度体験したいと思えるような過去はなかった。
ああ、最初からなかったことにすればいいんじゃないか。
どうしてもそう思えて仕方がなかった。
けれどそれは不可能だって分かっているから。
未来、かな。行くなら。
そんな未来があるのかも分からないけれど。
十年後の私は、消し去りたい過去に負けないくらいの鮮やかな過去を作れましたか。
十年後の私は、前を向いて歩けていますか。
─もしもタイムマシーンがあったなら─ #10
その少女は小さい頃から、気味悪がられてきた。
感情が一切読み取れない無表情。
意思を見せることのない無関心。
そして、漆黒にも似た暗い瞳。
分からない。分からない。
私は何が欲しいんだろう。
なにもかもが分からない。
少女が心の中で叫ぶようにして欲しているのは、きっと愛情。
─今一番欲しいもの─ #9