くりゆうなお

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7/24/2024, 1:41:34 PM

友情


ボクはキミと出会えて、とても嬉しかった。
嬉しかったのに、キミはひどいことをした。
ひどいことをしてしまったことの事情を
キミはずいぶん長い間、ボクに話してくれなかった。

ボクと島へ旅行したいとキミは誘い、
夜の海の波打ち際で共に素足になると、
やっと話してくれた。

こんな話信じないだろ、オマエは。
信じがたいけれど、信じるしかない。
……信じて、くれるんだ?
内容は信じられないけれど、キミを信じたい。
……オマエ……強いな。そういう、オマエにだから話せた……。

キミは泣いていた。
あの日のボクも泣いていた。
ボクはキミと同じ立場になっても、
キミのようにはできなかっただろう。

ボクがひどいことをされたことは変わらないけれど
キミが事情を、理由を、秘密を明かしてくれたから
ボクは砂まみれの足を海ですすいだ。
キミは海で顔をすすいだ。

ボクたちはこれまでも、これからも……

6/23/2024, 1:22:35 PM

子どもの頃は、貴方を大きな人だと思っていた
大人になって、恋人になって、貴方に勝って
思っていたよりも、ずっと脆いと気がついた
貴方も、そしてボク自身も

それからは、優しくなりたいと思った
病めるときも、健やかなるときも、貴方を守って
思っていたよりも、ずっと永く一緒にいると決めた
貴方はどうか、一生ボクに追いついてきて下さい

5/7/2024, 1:19:20 PM

初恋の日


僕たちは海を越え
フィールドを走り回った
帰国の前夜 帰りたくなかった
いつまでも このままでと

あれから四半世紀
僕たちは何も変わらなかった
むしろ連帯は深まった
強く 優しくもなれた

あの夜からも
これからの朝も
……キャプテン
あんたが好きです



3/26/2024, 11:53:40 AM

ないものねだり


本当は既に とても幸せなのだ
自分で選んだ競技で海を渡った
望まれてゴールを守っている

同室の彼の寝顔に 期待をしている
フィジカルな意味でも
メンタルな意味でも

カーテンの向こうに 新しいプリズム
実家の道場での稽古がなくとも
いつもの時間に目が覚める

朝のひとときに 見つめている
彼を見つめながら
彼を望む自分を見つめている

3/4/2024, 11:54:54 AM

大好きなきみに

「事件でも急用でも、無い、と?」
 紅薔薇の狐の訝しげな声が、安堵に変わり、最後に甘く潤ったと電話越しに感じた。儂の願望だろうか。
「そうじゃ、今日の題目は『大好きなきみに』なのだ」
「だからオレに電話を?」
「『大好きなきみに電話する』しか思いつかなかった」
「……仕事の状況は?」
「……山積みだ。すまん、切る。叱られたくて甘えたな」
「あ、待って。野暮な質問をしてしまいました。困ったな、聞かなければよかった。オレの方こそ、すみません……」
 狐はもう一度、困ったなと繰り返した。
 今すぐ会いたくなってしまいます。
 その声は甘かった。
 儂の願望ではなく、本当に甘かった。

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