しゅら

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6/20/2024, 4:28:30 PM

あなたがいたから

目を擦り
紫色の 暁と
添いて咲きゆく 君の背中に
涙をこぼす 孤独感

手を伸ばし
あなたの色の 陽炎と
徐々に重なる 君の笑顔に
顔綻ばす この時間

 彼は6年前、妻に先立たれてから、シングルファザーとして身を粉にして働いてきた。しかしその分、娘と過ごす時間が少ないことを気にしていた。夏のある日、彼はあくびをしながらリビングへ向かう。するとベランダには、早朝にもかかわらず朝顔の世話をする娘の姿があった。(彼女は私の知らないところでどんどん成長している)そう考えると、不意に彼を無力感が襲った。妻を亡くしてから、彼の孤独を埋めていたのは、生きる意味を作ってくれていたのは、彼女だったのだ。「あ、お父さん、おはよう!みてみて!きれいに咲いてるよ!」朝顔の生長を喜ぶ彼女のように、私も彼女の成長を素直に喜べるのだろうか?妻の面影をなぞる彼女と二人、家族三人の笑顔のだんらんが、そこにはあった。

6/19/2024, 7:05:17 PM

相合傘

はつはるの
日差しにぼうっと立ち止まり
色鮮やかな桜を見上げ
独りこっそり傘をさす
さしたての
傘にさあっと雨が降り
ふと暖かなあなたに焦がれ
頬にひっそり紅をさす


 彼女は不安の中にいた。今まで気力なく、なんとなくで生きてきた彼女は追い詰められていた。「私はどうすればいいのだろう?」大学は卒業できることになっていたが、その後がない。周りの人間は就職が決まっている。友人も、恋人もいる。毎日が楽しそうだ。優柔不断で、他人の目を恐れ動けないでいる彼女は、そっと目を閉ざすことにした。一日中部屋で項垂れていると、昔の友人のことを思い出した。その人物は彼女の小学校の頃の同級生で、初恋の相手だ。子供時代を回顧し、当時の喜びや情熱を思い出した彼女は、この心を誰かと分かち合いたいと思い、かつての友人に連絡を入れるのだった。