27(ツナ)

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1/28/2026, 10:57:47 AM

街へ

「街は危険が沢山よ。……それでも行くの?」
僕は母の言葉に、躊躇わず首を縦に振った。
「そう…。」
母は悲しそうな顔をしてそう言った。
本当は明るく送り出して欲しかった。
僕だって、街に出るのは少し怖いから。

幼い頃に1度だけ街に住む叔父さんに連れて行ってもらったことがある。
街にはここよりも多くの人がいて、色とりどりのお店や家が立ち並んで、まるで夢の中にいるようだった。
「なぁ?凄いだろ!?お前も大きくなったらこっちに来ておじさんと暮らすか?」
豪快に笑って僕の頭を荒く撫でる叔父さん。
僕は何度も首を縦に振って答えた。

僕もようやく大きくなって、街へ出られる。
その時───、
「…そう。異端者の兄に唆されてあなたは変わってしまった。あなたはこの村の守護神なのに、皆を裏切るのね。この村の神は民を見捨てて皆殺しにするのね。民を裏切った神を産んだことで私まで糾弾されて殺されるのね。」
微かな母の声が聞こえて、あと一歩で外へ出ようとした僕の足は止まった。
家の奥の方から母の暗い呪いのような声。
まるで鎖で繋がれたように身動きが取れなくなる。
「……ぁ、あ゛ぅ、ぁ。」
もどかしい気持ちが獣の唸り声のようになり僕の口から出るが、体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。
街へ出たい。街へ。街へ。

1/27/2026, 10:34:32 AM

優しさ
(※1/25 「安心と不安」の別視点。)

「好き」だと言ったら喜んだ。
少し素っ気なくしたら不機嫌になる。
抱き締めればまた喜ぶ。
試しに金をせびると嫌な顔はするがくれる。
甘やかしてデートするとまた上機嫌になる。
イラついて、つい暴言吐いてちょっと手を出したら「もう別れる。」と脅してきた。
また「好き」だと言うと喜んだ。

単純で扱いやすい。
俺は優しさで飴と鞭を使い分けて、人間として彼女を成長させてやってる。
お前にとって俺より優しい男は他に居ないからな。

1/26/2026, 10:51:53 AM

ミッドナイト

深夜12:00。
11:00頃に眠気のピークが来て閉じそうになる目を無理矢理開けていると、だんだん眠気が覚めてくる。
時計を見ると深夜12:00。
深夜12:00を過ぎるとあんなに酷かった眠気が嘘みたいに消える。
まるで、僕という人間の中身が深夜12:00を境にリセットされるよう。

これは、ミッドナイト病だ。

1/25/2026, 10:15:26 AM

安心と不安

「好き」って言われて安心した。
素っ気ない態度に不安になる。
抱きしめられて安心した。
お金を無心されて不安になる。
一緒にデートして安心した。
叩かれて汚い言葉を吐かれて不安になる。
また「好き」って言われて安心する。

安心と不安を繰り返す毎日、薄々、こんなの恋じゃないのは気づいてる。
けど捨てられたくないし、捨てたくない。
ただそれだけの関係が、なぜか心地いいの。

1/24/2026, 11:25:17 AM

逆光

散々殴られて蹴られて、意識は遠のいていった。
むしゃくしゃしてたのか、今日は一段と酷い。
路地の隙間からは落ちかけた夕陽が赤黒く輝いていた。
眩しさと痛みで目が霞んでよく見えない。
ふと、路地に誰かが入って来た。
「おいおい、何してんねん寄って集って。しょうもないことして遊んでんと、ガキは早よ家帰って勉強でもしとけや。そうせんと……殺したるぞ。」
明るくおちゃらけた声から急に殺気を込めた声色に変わって、その場の空気もピンと張り詰めた。
僕を殴っていた奴らは、その人の殺気に完全に飲みこまれ腰を抜かして情けなく逃げていった。

僕もその人の殺気に金縛りにあったように動けなくなる。
ひと目だけでも顔を見ようと、あちこち痛む体を何とか起こすと、スーツに身を包みタバコを咥えて鋭い目で僕を見下ろす赤黒い逆光を浴びた男が立っていた。
逆光のせいで全身が返り血で真っ赤に染ったように見えて、僕はお礼の言葉も言えずただ見上げることしかできなかった。
僕を一瞥すると、その人は逆光を背に真っ黒い路地の中へ消えていった。

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