街へ
「街は危険が沢山よ。……それでも行くの?」
僕は母の言葉に、躊躇わず首を縦に振った。
「そう…。」
母は悲しそうな顔をしてそう言った。
本当は明るく送り出して欲しかった。
僕だって、街に出るのは少し怖いから。
幼い頃に1度だけ街に住む叔父さんに連れて行ってもらったことがある。
街にはここよりも多くの人がいて、色とりどりのお店や家が立ち並んで、まるで夢の中にいるようだった。
「なぁ?凄いだろ!?お前も大きくなったらこっちに来ておじさんと暮らすか?」
豪快に笑って僕の頭を荒く撫でる叔父さん。
僕は何度も首を縦に振って答えた。
僕もようやく大きくなって、街へ出られる。
その時───、
「…そう。異端者の兄に唆されてあなたは変わってしまった。あなたはこの村の守護神なのに、皆を裏切るのね。この村の神は民を見捨てて皆殺しにするのね。民を裏切った神を産んだことで私まで糾弾されて殺されるのね。」
微かな母の声が聞こえて、あと一歩で外へ出ようとした僕の足は止まった。
家の奥の方から母の暗い呪いのような声。
まるで鎖で繋がれたように身動きが取れなくなる。
「……ぁ、あ゛ぅ、ぁ。」
もどかしい気持ちが獣の唸り声のようになり僕の口から出るが、体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。
街へ出たい。街へ。街へ。
1/28/2026, 10:57:47 AM