君に会いたくて
(※1/18 「閉ざされた日記」の続きのお話)
あれから数年、あっという間に月日は流れて
あの時小学校だった俺は中学生になった。
あの屋敷の事も、少女の事も、日記の事も、記憶がすっぽり抜けたように忘れ去っていた。
ある夏の日だった、友達グループが近所に誰も知らない心霊スポットがあると盛り上がり、夜に探検に行くことになった。
あまり乗り気じゃなかったが俺も渋々ついて行くことにした。
忘れていたはずなのになんだか見覚えのある道。
気持ちに反して足はどんどん前へ進んでいく。
「あの時と同じだ…。」
「ん?なに?怖くなった?」
友達のひとりが振り返ってからかう。
まもなく目的地に到着した。そこで俺は全て思い出した。「なんで、忘れていたんだろう。」
ぼーっと洋館を眺めていると、2階に人影が見えてこっちに気づいたのかサッと隠れてしまった。友達たちも一部始終見ていたのか一斉に騒ぎ出して俺を置いて来た道へ逃げ帰ってしまった。
ただ一人、その場にポツンと残されて、躊躇せず俺は洋館の中に入って2階へ向かった。
日記のある部屋へ。
日記を開くとそこには、あの時俺が残したメッセージの返事が書いてあった。
【初めまして。友達、嬉しい!よろしくね。】
俺は酷いことをした。ずっと忘れていたなんて。
【ごめん。友達になったのに、ずっと会いに来なくて。本当にごめん。寂しい思いさせたよね。…これからはずっと一緒ニイルヨ。】
そう書き添えると、誰もいないはずなのに日記に文字が浮かび上がる。
【ずっと、ずっと君に会いたかった。待ってたよ。ありがとう、すごく】
「嬉しい……。」
声が聞こえて振り向くと、あの頃と背格好も服装も変わらない、あの少女が立って微笑んでいた。
閉ざされた日記
それは山奥の誰も知らない廃墟にひっそり置いてあった。
子供の頃、色んな所を探検するのが好きだった。
子供の勘なのか何か察知して俺は躊躇せずに草むらの中へ入っていった。
誰も入ったことがないのか草はまっすぐ伸びて必死に掻き分けて進む。
まるで、誰かに誘われているかのように足がどんどん前へ進んでいく。
かなり歩いて、気づくと森の中にポツネンと佇む古い洋館のような建物を、見つけた。
しばらく眺めていると、2階の窓に人影を見た。
俺は少し怖く感じながらも建物の中へ入った。
「おじゃまします──。」
小さく呟いて忍び足で人影を見た2階へ向かう。
洋館の中は静まり返り人の気配は全くしなかった。
机の上に1冊の鍵付きの日記を見つけた。
すぐ真横に日記の小さな鍵が置いてあったので開けて中を見てみることにした。
【私と同じくらいの男の子が来た。お友達になれるかな?ずっとひとりで寂しかった。一緒に遊びたいな。】
日記には今日と同じ日付と短い文章だけが書かれていた。
好奇心に狩られた俺は置いてあったペンで日記に書き込んだ。
【初めまして、僕と友達になろう?】
俺は無意識に日記を閉じて鍵をかけて、気づいた時にはいつの間にか家に帰っていた。
木枯らし
得体の知れない恐怖に心が支配される。
窓には強い風が吹きつける。
四方八方からガタガタと大きな音を立ててまるで責め立てられているよう。
太陽の出ない暗い曇天の空を眺めながら部屋の隅にうずくまった。
木枯らしが去れば、落ち葉が吹き落ちて木は丸裸になる。
木枯らしが去れば、私の罪も明るみになる。
全てを吹き飛ばされ、白日のもとに晒され、凍てつくような冷たさで私を罰する。
木枯らしが、木枯らしがやってくる。
美しい
外見が美しい人は心が美しい人に惹かれる。
心が美しい人は美しい言葉を話す。
美しい言葉は大衆を惹きつける。
美しい景色は人の心を清める。
どんな形であれ、美しくあって欲しい。
美しさの定義はひとつだけじゃないから。
この世界は
この世界は誰のものだと思う?
国の偉い人?スーパースター?裏社会の人間?
どれも違う。
この世界はこの世界のもの。
勘違いしてる、自分が偉い、自分がこの世界を動かしてるって。
違うよ、私たちはみな等しくこの世界に自然発生しただけの生物でしかない。
むしろ、この世界を破壊する有害生命体かもしれない。
ならばせめて、私は生を受けた短い時間で生かしてくているこの世界に恩を返したい。