27(ツナ)

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11/1/2025, 12:08:36 PM

凍える朝

「北海道行こ!」
それは唐突に計画された。
「え〜関東平野にいても寒くて凍え死にそうなのに、嫌だよ〜。」
寒がりの私は急な友達の提案を即座に断ったが、意思は固いらしく、私を置いてけぼりにどんどん計画を進める。
「なんでこの寒い時にわざわざ北海道?」
「どうしても、あんたに見せたいものがあんのよ。寒がりなのは知ってるけど、この時期じゃないと見れないの!」
どうやら私の為に計画をしているようで、無下に断る事も出来なかった。

あっという間に北海道旅の日。
観光を楽しんで旅館に着くと心配そうに何度も携帯を見る友達。
「うん、天気も風も大丈夫そう。よし明日、早朝に出るから今日は早く寝よう。」
言われるがままに私たちは早めに寝て次の日、朝4時頃に起こされた。
何故か目隠しをされて腕を引かれてどこかへ連れて行かれる。

パッと目隠しを外されて、ゆっくり目を開けると
目の前には湖、よく見ると、大きな白い花?のようなものが湖一面に咲いていた。
そのあまりに幻想的な光景に私は言葉を失った。
「フロストフラワー、っていうんだって。水蒸気が寒さで花みたいな結晶になるんだって。条件が揃わないと滅多に見れない凄い神秘的な光景。……誕生日おめでとう。これはあたしからの誕生日プレゼントってことで、今日あんたとフロストフラワーが見れてよかったよ。」
「……。ありがとう。」
凍てつくような寒さで体の感覚がないのに、心がじんわり暖かくなって無意識に涙が零れた。

最高の誕生日プレゼントを貰った。
ある、凍える朝のお話。

10/31/2025, 10:50:55 AM

光と影

兄は光だ。
僕は兄の影。
でも、それでいい。
光り輝く兄を1番近くでずっと見ていたい。
光があれば影もある。
兄の光が陰る時、僕は兄だけの光になる。
光と影、兄と僕。
歪な愛情でも依存でもなんでもない、これは自然の摂理。


10/30/2025, 10:16:07 AM

そして、

それは物語を結末に導く言葉。
「彼は本当に良い人だった、そして、──」
「あの人は出ていった、そして、──」
「試験が終わった、そして、──」

たった3文字で明るい結末にもくらい結末にも導くレールのような言葉。

あなたなら「そして、」の後にどんな物語を描きますか?

10/29/2025, 10:51:16 AM

tiny love

愛の告白、通算6連敗中。
彼女を好きになったのは保育園の頃。
初めての告白は保育園、次は小1、次は小3、次は小6、次は中1、次は中2、そして今日、中学3年、7回目の告白。

俺は今日、なんとしても告白を成功させなくてはいけない。なぜなら親の仕事で、近々別の県に引っ越してしまうからだ。
身だしなみを整えて、放課後体育館裏で彼女を待つ。
嫌そうな顔をして渋々彼女は来てくれた。
「…また?"好き"は聞き飽きたんだけど?」
いや今日の俺は一味違う、と首を横に振る。
「ううん。今日は、最後のお別れ。俺はそろそろ遠くへ引っ越すんだ。だから最後に本当に君に伝えたかったこと。……愛してます♡」
お茶目に指でハートを作って見せると、彼女は思い切り笑いながら俺の頭を小突く。

「最後までバカだね〜負けた負けた、降参。
はい、私の連絡先。遠距離だからって浮気したら殺すから。」
ぶっきらぼうに彼女から一枚の小さなメモ用紙を投げ渡された。

俺は彼女からもらった小さな愛をギュッと握りしめて、遠い所へ旅立った。


10/28/2025, 11:04:15 AM

おもてなし

生まれて初めて"占い"というものに行ってみた。
半信半疑だったが、言葉巧みな占い師の話術に僕はまんまとハマった。
「占いは"裏ない"ですから。」
胡散臭い笑顔でダジャレまで言う。
「ははは、じゃあ、"おもてなし"には?裏があるんですか?」
「ええ、そうですね。裏心があるから人はおもてなしをするんです。」 
「そうですか。なら、ぜひ今度僕から先生に"おもてなし"させていただけますか?」
どうやら僕は占い師の彼女を気に入ってしまったようだ。
帰り際、彼女に連絡先を渡してみた。
「あ、結構です。私は"占い屋さん"なので。」
クスクス笑って僕の連絡先を目の前でビリビリに破り捨てた。

占いもたまには悪くない。また、来よう。

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