27(ツナ)

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凍える朝

「北海道行こ!」
それは唐突に計画された。
「え〜関東平野にいても寒くて凍え死にそうなのに、嫌だよ〜。」
寒がりの私は急な友達の提案を即座に断ったが、意思は固いらしく、私を置いてけぼりにどんどん計画を進める。
「なんでこの寒い時にわざわざ北海道?」
「どうしても、あんたに見せたいものがあんのよ。寒がりなのは知ってるけど、この時期じゃないと見れないの!」
どうやら私の為に計画をしているようで、無下に断る事も出来なかった。

あっという間に北海道旅の日。
観光を楽しんで旅館に着くと心配そうに何度も携帯を見る友達。
「うん、天気も風も大丈夫そう。よし明日、早朝に出るから今日は早く寝よう。」
言われるがままに私たちは早めに寝て次の日、朝4時頃に起こされた。
何故か目隠しをされて腕を引かれてどこかへ連れて行かれる。

パッと目隠しを外されて、ゆっくり目を開けると
目の前には湖、よく見ると、大きな白い花?のようなものが湖一面に咲いていた。
そのあまりに幻想的な光景に私は言葉を失った。
「フロストフラワー、っていうんだって。水蒸気が寒さで花みたいな結晶になるんだって。条件が揃わないと滅多に見れない凄い神秘的な光景。……誕生日おめでとう。これはあたしからの誕生日プレゼントってことで、今日あんたとフロストフラワーが見れてよかったよ。」
「……。ありがとう。」
凍てつくような寒さで体の感覚がないのに、心がじんわり暖かくなって無意識に涙が零れた。

最高の誕生日プレゼントを貰った。
ある、凍える朝のお話。

11/1/2025, 12:08:36 PM