秋恋
「秋に始まる恋は長続きするって知ってる?」
いたずらっぽく微笑んで聞く、君のその眩しい笑顔が秋晴れの太陽に反射して眩く光る。
「じゃあ、始めてみる?長続きする恋。」
反撃しようと、そんなことを口走るとさっきまでま余裕だった君の表情が一転して頬が紅葉していく。
まるで紅葉みたいな君に思わず見惚れる僕。
秋は果実も恋も、みのる季節。
愛する、それ故に
学校帰り不意に友達に聞かれた。
「ねぇ、推しと付き合ったり結婚したりしたいと思う?」
そんなとんでもない事思うわけない。
「ないね。全く。」
「えー!そうなん?でも、しょっちゅう好きだの愛してるだの言ってるじゃん?」
興味津々の様子で質問攻め。
「まぁ、人それぞれあるからそういう下衆な考えのファンもいるかもしれないが私は違う。」
「じゃあさ、あんたにとって推しってなに?」
待ってましたと言わんばかりに私の心の中の早押しボタンが『ピンポーン!!』と鳴る。
「ズバリ、命の源! 推しは生きる活力!推しがいるから生きられる!推しのために健康を維持し、推しのために長生きする!愛ゆえに、彼らの幸せを常に願う!」
天を指さし高らかにそう言うと、いつの間にか周りで聞いていた人達から拍手喝采を浴びていた。
静寂の中心で
真の静寂とはなんだろうか?
ただ辺りが静かなだけ、いや。
ただ動かずじっとしているだけ、いや。
きっとそんな単純なものではないのだろう。
本当の静寂は心に波風が立たない"凪"の状態だ。
ただひたすら、穏やかな状態。
けれど、そんな状態になるのは普通に生きているだけではなれないだろう。
現に、坐禅を組んでもそこまでの静寂は訪れなかった。
何年も機会をうかがったが、ダメだった。
そして、ついにこの日が来た。
今まで色んなことを試したが、心が凪になることは無かった。
これは最後の方法、生命活動を終わらせる事。
消えゆく意識の中、波立っていた心がスーッと引いていき、凪は訪れた。
今まさに、僕は静寂の中心にいるのだ。
燃える葉
自分に前世の記憶が少しだけ残っていることに気づいたのは最近だった。
そんな折、僕は無性に京都に心惹かれ時間を作り、秋の古都を訪れることにした。
初めて赴いたはずなのに、昔からこの地をよく知っているように感じた。
街中を適当に歩く中、ある石碑の前で勝手に脚が止まった。
その石碑には『本能寺跡』と彫られており、それを見た瞬間、記憶が雪崩のように押し寄せる。
そうか、僕の前世は彼だったのか。
その日の日暮れ、最後に訪れたある旧家。日本らしい侘び寂びを感じる趣ある旧家屋。
外の景色を眺めた時、僕は、いや、彼か?
密集する紅葉がまるで建物を覆い尽くす炎のように赤黒く揺れ、身震いしながらその場に崩れ落ちた。
まさしく燃える葉。
儂を焼き殺した、燃える葉よ!
moonlight
夜は少し冷える。海沿いは寒いくらいだ。
それでも君が「海を見に行こう!」と無邪気に言うから、僕は君に手を引かれて夜の海辺を歩く。
風が吹いて、月を覆っていた雲が流れていく。
君は僕の手をパッと離して、波音をBGMに軽やかに踊り出す。
現れた月の光は君を照らすスポットライトになった。
僕はその光景にただただ心を奪われていたんだ。