モノクロ
カラフルなのは見ていて鬱陶しくてどうしても好きになれない。
モノクロが好き。白と黒、実にシンプル。
持ち物から洋服、家具に至るまで私の生活は全てがモノクロに包まれている。
そんな日々を送るある時、公園を散歩していると小さな男の子が駆け寄って来た。
子供は好きでも嫌いでもなかった、ただ突拍子もないから怖いだけで。
「はい、これあげる!」
その子は手にした一輪の花を私に手渡すとスタタタとどこかへ駆けていってしまった。
手持ち無沙汰に一輪の花を持ったまま公園にひとり立ち尽くした。
しばらく呆然としたが、無性に湧き上がる嬉しさに口角が少し上がる。
モノクロだった私の部屋にピンク色のダリアの花が飾られた。
彩りがあるのも、悪くない。
永遠なんて、ないけれど
永遠なんてない。
人は産まれたらみんな死ぬ。
命は平等で、誰にでも終わりは来る。
幸せはいつまでも続かないかもしれない。
永遠なんてない。
永遠なんて、ないけれど
ないからこそ、限りあるこの人生をかけて君に永遠の愛を誓う。
涙の理由
学生の頃、少し変わった友人がいた。
一緒に映画を見に行った時、私は感動のあまり涙を流した。
映画が終わると、友人から「涙の味は何味?」と意味不明な質問をされた。
映画の余韻に浸っていたかったのに、熱がサーッと冷めていった。
「あ〜ぁ今、余韻に浸ってた所なのに。涙の味?…涙って味あんの?」
「あはは、ごめんごめん。涙って味あるよ?味でその涙の理由がわかるんだ。どう?」
唇の横を流れた涙の跡を舌で探ると確かに、微かに甘い気がした。
その日以来、涙の味が頭の片隅に記憶された。
両親が喧嘩して母が涙を流した時。
彼女が別れ話を切り出して泣き始めた時。
上司に叱られて涙が流れた時。
涙の味から涙の理由を探るのが癖になっていった。
そんなある時、僕に涙の味を教えてくれた友人が自ら命を絶ってこの世から去った。
全く現実味がないまま、彼の葬式に参列した。
棺の中には、僕に得意げに涙の味を語ってくれた彼が静かに目を閉じて眠っていた。
僕の目から久しぶりに涙が溢れてきた。
その味は今までにないくらい塩辛い涙だった。
塩辛い涙の理由───は嘘泣き。
コーヒーが冷めないうちに
たまたまカフェで見かけた彼女。
カップルや友達と同士が多い店内でカウンターでひとり、コーヒーを楽しんでいた。
かく言う僕も珍しいひとり客で、彼女から椅子2つ分開けた隣に座って、コーヒーをひと口。
外の景色を眺めていたその時、不意に彼女と目が合う。
彼女と目が会った瞬間、コーヒーが冷めないうちに僕は恋に落ちてしまったみたいだ。
椅子2つ分あった君と僕の距離が1席ずつ縮まった。
パラレルワールド
突然、目の前に自分が現れた。
パラレルワールドから来たらしい。
顔や背格好はもちろん鏡写しのようで、自分にしか理解できない質問を完璧に答えてくる。
正真正銘、自分自身だった。
ありえない状況なのに案外、冷静でいられる自分に驚いた。
「ってか、パラレルワールドってなんですか?」
なぜか自分自身に敬語を使ってしまい半笑いで問う。
『え、あー、なんか、同じ時間で進んでる別世界って感じ?ネットに書いてあった。なんか知らんけど、朝起きたら知らない所で寝てて、そんで自分が横で寝てたから最初、幽体離脱だと思ったんよね。ウケるよね。』
と言いつつ、目がニコリとも笑ってない。そんなところもそっくりだ。
「そもそも、なんでこっちの世界?に来たんすか?なんか、原因とか。」
『あ〜それなんだけど、全くわからんくて仮説立てた。』
「仮説…。」
『うん。ズバリ!バグだな!ゲームとかでよくある。』
俺は目の前にいるあまりにもアホな自分を思わず殴った……と思ったけれど、拳は宙を殴っていた。「あ、帰ったな。」そう悟り俺は何事も無かったように日常に戻った。