27(ツナ)

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8/6/2025, 11:03:10 AM

またね
(※8/5 「泡になりたい」続きのお話)

泡になって消えてしまいたい。そう思って海に飛び込んだ。
海の中でひたすらもがく。潔く消えればいいのに本能が体が "生"に執着する。

だけど息は続かなくて意識が遠のいていく。
そんな時、不意に背後から抱き抱えられて海面に上昇していく。

「ぷはっ、うぇっ。ゴホッ、ヴ……ゲホ、ゴホッ。はぁはぁ…。だ、誰?」
そのまま浅瀬まで運ばれた。
「……なんでこんなことするの?あなたは人魚じゃないでしょ!?危ないよ!」
「に、人魚…?」
「荒れた海は私たちでも危険なの!だからもう二度とこんなことしないで!穏やかな海に戻ったらまた君の元気な顔を見せてね!それじゃ、またね!」
そう言うと彼女は荒れた海にまた戻って行った。
彼女の下半身は足の代わりに、まるで魚のような鮮やかなヒレが付いていた。

「また、ね。」
また。その言葉に僕は救われた。



8/5/2025, 12:24:43 PM

泡になりたい

友人も家族も頼れる人は誰もいない。
孤独だ。
人間として生きている意味がわからなくなってしまった。
泡になって消えてしまいたい。
泡になって消える……。
あれ、なんかこんな話、昔聞いたことがあるような。
人魚姫?だっけ。

どんな話か忘れたけれど、泡になって消えるんだよな。
そんな事を思い出しながら、僕は荒れた海に身を投げた。
人魚姫のように泡になって消える様に。

8/4/2025, 10:25:08 AM

「ただいま、夏。」

夏はなんだか実家に帰ってきたような安心感のある季節。
実際に実家に帰るって意味もあるけど、なんか夏が来るだけで「帰ってきたー」って気分になる。

花火大会に夏祭りと毎年同じようなことをしてるから余計にそんな気分になる。
毎年同じようなことしてるのに、なんか毎年新鮮で。
不思議とこぼれる。

「ただいま。」

8/3/2025, 10:52:03 AM

ぬるい炭酸と無口な君

プシュッ、カランカラン───
町で最後の1軒の駄菓子屋の店先。
ラムネを開ける。
さぞ冷えているのかと期待して口をつけると微妙にぬるくて顔を顰めた。

隣にちょこんと幼い女の子が座ったが俯いたまま一言も喋らない。
気まずい空気に無性に口寂しく、何度もラムネに口をつける。
「……はぁ〜、暑かね。何か食べんと?」
「……。」
「兄ちゃんがなんか買うちゃろうか?」
「……。」
話しかけても全然反応しなかった。お店の中に入って婆さんに聞いた。
「なあ、あん子、全然喋らんとやばってん、どこん子か知っとる?」
女の子を指さして言うと、婆さんは不思議そうに
「あん子って誰?誰もおらんじゃなか。ちゅうか、あたさっきから一人で喋っとるばい?」

あー、無口なんじゃなくて、この世の子じゃなかったのか。ぬるかったラムネが少しだけヒンヤリした。

8/2/2025, 12:14:48 PM

「波にさらわれた手紙」

忘れ物をして教室に戻ったら、親友が私の好きな人に告白しているところを偶然見てしまった。
混乱して激しい動機と吐き気に襲われて急いで教室から逃げ出した。

帰り道、堤防に座って海を眺めて気持ちを落ち着かせ、ふと鞄の中に手紙があるのを思い出した。何度も彼に渡そうとして躊躇した手紙。
「もうこんなの、意味無いじゃん…。」
私はその手紙をビリビリに破いて海に投げ捨てた。紙屑になった手紙はそのまま波にさらわれて溶けていった。

翌日、学校に転校生がやって来た。
綺麗な金髪と透き通るような翡翠色の瞳。
おとぎ話の王子様のような姿にクラス中の女子が色めき立つ。
そんな彼が突然、スタスタと私の元へやって来て手を差し伸べた。
「手紙、ありがとう。今日から君と僕は恋人だ。」
「……はぁ!?」
再び教室中がどよめいた。
「昨日、僕に手紙をくれたろう?好きです。恋人になってほしいって。」
「…そ、それ、昨日私が、(バラバラにして海に捨てたやつ…)!?」
目を丸くして固まる私の手の甲に彼は微笑んでキスをした。

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