ぬるい炭酸と無口な君
プシュッ、カランカラン───
町で最後の1軒の駄菓子屋の店先。
ラムネを開ける。
さぞ冷えているのかと期待して口をつけると微妙にぬるくて顔を顰めた。
隣にちょこんと幼い女の子が座ったが俯いたまま一言も喋らない。
気まずい空気に無性に口寂しく、何度もラムネに口をつける。
「……はぁ〜、暑かね。何か食べんと?」
「……。」
「兄ちゃんがなんか買うちゃろうか?」
「……。」
話しかけても全然反応しなかった。お店の中に入って婆さんに聞いた。
「なあ、あん子、全然喋らんとやばってん、どこん子か知っとる?」
女の子を指さして言うと、婆さんは不思議そうに
「あん子って誰?誰もおらんじゃなか。ちゅうか、あたさっきから一人で喋っとるばい?」
あー、無口なんじゃなくて、この世の子じゃなかったのか。ぬるかったラムネが少しだけヒンヤリした。
8/3/2025, 10:52:03 AM