「空はこんなにも」
恋に落ちた。
いつも仏頂面で笑わない人と思っていた彼が、不意に見せた笑顔に。
空はこんなにもどんよりしてるのに、私の心は澄み切っていて気持ちいい。
これまでの些細なできごとや嫌な思い出がまっさらになる。
空はこんなにも重苦しいのに、私の心は空に飛びそうなほど軽やかで楽しい。
自然と顔がほころび、辺りの景色がキラキラ輝いて見える。
明日も彼の笑顔が見れるといいな。
「子供の頃の夢」
子供の頃の夢を覚えていますか?
「はい。」
その夢は叶いましたか?
「…いいえ。」
子供の頃はその夢が叶うと思っていましたか?
「はい。」
現状に満足していますか?
「…いいえ。」
まだ、あの頃の夢を諦められませんか?
「…はい。」
もし人生を巻き戻してやり直せるなら、子供の頃の夢を叶えたいですか?
「はい。」
最後の問いに答えた後、僕を乗せたタイムマシンは過去へと発進した。
「どこにも行かないで」
優しい両親のもとに産まれた礼儀正しく優秀な娘。それが私。
誰が見ても非の打ち所がない素敵な家族。
だがある日突然、私の中で何かが切れてしまった。
きっかけはテレビで、都会のある一角に問題を抱えた子供たちのスラム街のような場所があるというドキュメンタリーを見てからだった。
私はその日以来、あの街の光景が頭から離れなくなった。毎日毎日あの街の事を考えた。
次第に「私もあそこへ行きたい」という思いが強くなった。
両親は私の異変に気づいて、必死に涙を流しながら引き留めた。
「お願いだから…どこにも行かないで。あなたの居場所はここなのよ。」
追い縋る母親を見て、冷酷に言う。
「まだ私を縛るつもり?私の居場所はここじゃない。私は今までどこにも行けなかった。ようやく、自由になれる。」
母は呆然として、父には無言で平手打ちされたが、それでも私の足はあの場所へ向かっていた。
そして今思う、私はなんて愚かな間違いを犯したのだろうかと。
私は「自由」と「無秩序」を勘違いしていた。
自由な居場所なんかではない、ここはこの世の──。
自分がいかに満たされて、何不自由なく生きてきたのか痛いほど実感して、人目も気にせず路上で泣き崩れた。
「君の背中を追って」
社長と出会ったのは小学生の頃まで遡る。
都会から引っ越してきた彼は、持ち前の明るさと話術で直ぐにクラスに馴染んだ。
幼い頃からそんな人を惹きつけるカリスマ性のあった彼を僕はずっと陰ながら羨望の眼差しで見ていた。
「将来は社長になるんだ!」
それが彼の口癖だった。クラスメイトはみんな、バカにしたり面白がっていたが、何故か僕はそのバカみたいな夢が実現する予感がした。
そうして君の背中を追った結果、やはり君は夢を叶えた。最初は僕と2人の小さな会社だったが、
彼はまた自信満々に言った「よし、社長は叶えた!次はこの会社をでっかくするぞ。」
僕はまだまだ君の背中を追い続ける。
「好き、嫌い、」
子供の頃、よく花占いをした。
道端に咲いている花を無造作に引き抜いては「好き、嫌い、好き、嫌い…」と花弁を1枚ずつむしり取っていく。
あの頃は何も考えなかったが今思うと残酷だなと感じる。
誰に教えられるでもなく、物心ついた頃には既にやっていた。
私たちは生まれながらに悪人だという説があるが、本当にそうかもしれない。
花だけでなく虫の命でさえ、なんの悪意もなく無慈悲に平気な顔をして奪っていた。
子供と公園に遊びに行った日、子供が不意に道端の花を引き抜いた。
教えてもいないのに「好き、嫌い、好き、嫌い…」と私の隣で無邪気に花占いをやりだした。
あぁ、私たちは生まれながらに悪人なんだ。