27(ツナ)

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6/14/2025, 11:11:28 AM

「もしも君が」

もしも、仮に、万が一、ひょっとして、

こういう言葉が嫌いだった。
掴みどころがなくて曖昧で、そんなあるかないか不確かな事を考えても時間の無駄だと。

君は僕とは真逆で、よく「もしも」「もしも」と心配事の多い女性だった。
ある日、僕はそんな君にうんざりして酷いことを言ってしまった。
「起こってもいないことをウジウジ考えるな。…鬱陶しい。」と。
彼女はそんな僕に反論せず、ただ肩を落としてどこかへ消えてしまった。

それから彼女とは連絡が取れなかった。メッセージを送っても既読もつかない。
僕は心配になって「もしも君が──」と、ふと心の中で呟いた。
そして理解した。大切だからそういう言葉が出るんだ。あるとかないとか不確かとか関係ない、ただ大切に想っているから。
僕は彼女にメッセージを送った。
「酷いことを言ってごめん。君のおかげで理解したよ。もしも君に何かあったらと心配になった。…君のことを大切に想っているから。」

6/13/2025, 10:53:59 AM

「君だけのメロディ」

小学生の時クラスにピアノが得意で絶対音感がある子がいた。
家がお金持ちで平凡な家の私からすると、なんだか独特な子だった。 
クラスのみんなも同じで、あの子のことをどこか一線を引いて見ていた。

お昼休みになると必ず1人でどこかへ行くので、ある時思い立って私は彼女を尾行してみることにした。

こっそりついて行くと、音楽室に到着した。
入り口の前でぴたりと立ち止まった。
「…なに?」
振り向いたあの子と目が合った。私は「しまった」と思い咄嗟に
「い、一緒に遊びたいな〜と思って。」
そう答えると、「入って」と音楽室に促された。

慣れた様子でピアノの椅子に座り、残り半分のスペースに私を招き入れた。
「私って…みんなに馴染めてないよね。変人だから。」
少し悲しそうに話すあの子。
「そんなことないよ?…少なくとも私はあなたのこと気になるし、できたら、友達にもなりたい。」
私がそう言うと、あの子はパッと閃いたようにピアノを奏で始めた。
短い演奏が終わると、
「これは、たった今閃いた、君だけのメロディ。…友情の証?ってやつ。…私もあなたと友達になりたい。」
そう言ってあの子は初めて笑顔を見せてくれた。
彼女は今でも私の大切な親友だ。

6/12/2025, 11:02:26 AM

「I love」

幼い時から一緒に遊んでいた幼馴染の男の子がいる。
昔からお互いに冗談でよく「好きだ」と言い合ってふざけ合っていた。
小さい時から兄妹のように育って、家族のように思っていたけど、中学卒業と同時に告白された。
「昔から好きだった。これは冗談でも嘘でもない。Likeの好きじゃなくて、Loveの好き…なんだ。…あの、ただ伝えたかっただけだから。じゃ。」
思いがけない告白に私は戸惑い無言で彼の背を見送った。

次の日、彼は居なくなった。
引っ越すなんて、なんにも聞いてなかった。
私は後悔した。気づいた時には遅かった。私もずっとLoveの好きだったんだ。
彼が居なくなった家の前に佇んで、泣きながら呟いた。
「……すぐに、答えられなくてごめんね。私も好きだよ。Loveの好き!」

「…じゃあ、俺たち両思いってことで…いいんだな。」 
振り返ると居なくなったはずの彼がいた。
私は思わず彼の胸に飛び込んだ。

6/11/2025, 11:21:38 AM

「雨音に包まれて」

ひとり旅に出た。
普段からひとりであちこち回るのは好きだったが、宿をとって旅をするのは初めてだった。

宿に泊まった次の日、目を覚ますと外からザアザアザアと聞こえてくる。
あぁ、今日の予定は全てキャンセルだなと肩を落とす。
朝食を終え、部屋に戻ってボーッと空を眺めながら雨音に耳を傾ける。
いつしか、気持ちが安らいで仮眠してしまった。

こんなにゆっくり過ごしたのはいつぶりだろうか。
あいにくの雨だと思ったら幸せの雨だった。

6/10/2025, 10:37:34 AM

「美しい」

本当に美しいものを見た時、人は言葉を失う。

あなたはそんな経験があるだろうか?

どんな些細なことでもいい。
帰り際に見た夕日が美しかった。
あの人の横顔が美しかった。
雨上がりの虹が美しかった。
美術館のあの展示が美しかった。
あの本のあの言葉が美しかった。

その美しさに一瞬でも言葉を忘れ夢中になったのなら、それは素敵な経験だ。

ありきたりかもしれないけれど、何かに対して美しいと思える、あなたのその心が、いちばん"美しい"と私は思う。

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