「春恋」
私の恋は春に始まった。
高校1年生、図書室に向かうためにまだ慣れない校舎を歩き回っていた。
私は超がつくほどの方向音痴で、かれこれ30分以上迷っていた。
誰かいないかと、適当な教室の扉を開けた時、先生と目が合った。
「ん?1年生か。どうした?」
艶のある黒い短髪に銀縁メガネをかけた色白で妙に色気のある、その姿に息を飲む。
「……! あ、えっと、すみません!! 図書室ってどこですか?」
つい見惚れてしまい、ハッと我に返る。
すると、先生がクスッと笑った。
「ここが図書室だけど?」
あまりの恥ずかしさと先生の美しさに、思わず目的の図書館から飛び出してしまった。
心臓が痛いくらいバクバクしている。
人生初の一目惚れだ。
桜色に色づく私の頬。
これが、春恋。
「未来図」
子供の頃は視野が広かった。
未来への展望が次から次に溢れてきて、色とりどりの未来図を描いた。
年齢を重ねていくうちに、その視野はだんだん狭くなって、自らの力では未来を描くことができなくなった。
周りに歩調を合わせて顔色を伺いながら、列からはみ出さないよう気を使って、言いたい事やりたい事を我慢して。
子供の頃、あんなにカラフルだった未来図は今や色褪せて、満員電車に揺られる日々。
「こんな未来図、描いたつもりなかったんだけどな。」
そんな色褪せた俺の人生に、突然、君が現れた。
君の存在は俺に新しい未来図を描かせてくれた。
1人で描けない未来も、2人でなら描くことができる。
「ひとひら」
人は満開の桜に美しいと心を惹かれる。
私は、桜は散り際こそ1番美しいと感じる。
桜の花びらが散る光景は圧巻だ。
まるで桜の雨。手を差し出すと、手のひらにひとひらの桜が降ってくる。
「風景」
ある風景を見て「あれ、この景色前にも見たことがあるような」と思うことがある。
俗に言うデジャブだ。
私は非科学的なことが好きな質で、パラレルワールドというものを信じている。
デジャブはきっと、別の世界線の自分が見た映像の記憶の断片が同じ風景を見ることで刺激されて見たことがあるように感じているのではないかと考える。
風景を通して別の世界線を生きる自分自身と繋がっているのかもしれないと思うと、気持ちが高揚する。
「君と僕」
君と僕は宇宙人と地球人だ。
君は犬が好きで、僕は猫が好き。
君は夏が好きで、僕は冬が好き。
君は辛いものが好きで、僕は甘いものが好き。
正反対だけど、お互いを尊重して共存している。
僕と違いすぎるから、君に興味が湧いて、もっと君のことが知りたくなる。
まるで宇宙との交信だ。