「春恋」
私の恋は春に始まった。
高校1年生、図書室に向かうためにまだ慣れない校舎を歩き回っていた。
私は超がつくほどの方向音痴で、かれこれ30分以上迷っていた。
誰かいないかと、適当な教室の扉を開けた時、先生と目が合った。
「ん?1年生か。どうした?」
艶のある黒い短髪に銀縁メガネをかけた色白で妙に色気のある、その姿に息を飲む。
「……! あ、えっと、すみません!! 図書室ってどこですか?」
つい見惚れてしまい、ハッと我に返る。
すると、先生がクスッと笑った。
「ここが図書室だけど?」
あまりの恥ずかしさと先生の美しさに、思わず目的の図書館から飛び出してしまった。
心臓が痛いくらいバクバクしている。
人生初の一目惚れだ。
桜色に色づく私の頬。
これが、春恋。
4/15/2025, 11:34:24 AM