「心のざわめき」
帰りのバス。最後はいつもあいつと2人きり。クラスは同じだが僕はカースト底辺、対して奴はカースト上位のいけ好かないイケメン。全く接点がない。…はずなのに。
「なぁ。」
前の座席に居たのに突然、僕の横に座ってきた。
「…な、なに?」
「いつもイヤホンで何聴いてんの?」
「な、なんで??」
「ん?特に意味は無いけど、単純に気になっただけ。どんなの聴いてんのかなーって。」
「……こ、これ。」
イヤホンの片っぽを差し出した。
「!!…いい曲だな。もっと、他にも教えて。」
「え!ほ、本当!?いいよいいよ。このグループなら、他にはこの曲とか!あ、こっちもおすすめで〜…他にも色々あって…」
オタクじみた早口にハッと我に返る。
「センス良いんだな。めっちゃ詳しいし、明日の帰りもまた教えてな?」
奴はからかうように笑って、僕の顔を覗き込んで来た。
その顔を見た瞬間、僕の心がざわざわした。
「…こ、これだからイケメンは、いけ好かないんだ。」
「?」
「君を探して」
あれはただの口説き文句だと思うけど、あの頃の私にはなぜかその台詞が響いちゃったんだよね。
仕事で大失敗して、付き合ってた彼氏には浮気されて、友達にも裏切られて…もう満身創痍でどうしようもなかった。
全てどうでも良くなって、アパートの屋上でお酒を浴びるように呑んで、そのまま下に落ちてやろうか、なんて思ってたら、扉が開いてひとりの男が私の腕を強く握ってこう言った。
「はぁ、はぁ、やっと…やっと間に合った。僕はずっと…君を探してたんだ。」
何言ってんだって思ったけど、気づいたら涙が溢れて止まらなかった。
「透明」
「透明な硝子に水を入れて太陽の光を当てると光が反射してキラキラ輝くよね?私あれすっごく好きなんだ。」
そう言って笑った彼女の笑顔は太陽の光に照らされてキラキラと輝いた。
「うん。すごく綺麗だよね。僕も好きだよ。」
「終わり、また初まる、」
ピッピッピッ、ピーッ
あぁ、終わりだ。
『人類の皆様に、最後をお伝えします。皆様、ご苦労様でした。今日で地球は終わりを迎えます。消滅まであと数分、最後の時、どうか心穏やかにお過ごしください。』
サイレンから地球の終焉を知らせるアラームと放送が聞こえる。
今日で地球は滅亡する。
西の空から眩しくて直視できない程の強烈な光がこちらに迫ってくる。
あぁ、終わった。
しばらく経って目を開けると、また赤ん坊の姿に戻っていた。
「あぁ、また初まる。」
なぜか僕は滅亡前の記憶が残ってしまうようだ。
僕以外は知らない。
この地球がもう既に何度も滅びては再生を繰り返していることを。
「星」
仕事から帰宅した時、たまに暗くなった夜空を見上げる。
あまりにも雄大で綺麗な星空に自然と感嘆の声が漏れる。
と同時に、自分の小ささを思い知らされる。
辺りの暗闇を利用して美しく強く輝きを放つ星。
私も夜空に光り輝くこの星達のように、もう少し強かに生きてみようと思った。