夜の闇に紛れて、ひたすら。
ただひたすらにバイクを蒸す。
必死に追手の影から逃げていく。
行く宛はあるが、些か距離が遠い。
それまで追手に見つからないことを祈る他ない。
バイクがカーブを曲がる。
夜は未だ明けそうにない。
憤慨しながら、廊下を歩く。
窓の縁に積もった埃。
毛先の絡まった絨毯。
私の屋敷なのだから、綺麗でなくては。
使用人は新しくするべきだろう。
沸き立つ激情を抑え、私室に入る。
一流に作らせた花瓶。
生けてある花は萎れてしまっている。
一級の木で作らせた一等の机。
その上にあるカレンダーは去年のままである。
まったく、使用人は何をしているのか!
主人の机は常に最新の状態でなくてはならない!
私が死んでいようとも、守って貰わなくては!
世界を救うために、恋人を手にかけた
世界に平和が訪れた。
恋人が育てていた薔薇は枯れ果てた。
肉を断つ感触も、耳に残る呻き声も、
思考を縛り付けて、離してくれない。
温かな日差し、荒れた家。
キッチンに立つ君はもういない。
カーテンを開け、窓の外を覗く。
君を犠牲にした世界は、
僕が見るにはあまりにも美しい平穏だった。
70bpmで拍動してるあなたの心臓
測定された数字でしか、
私はあなたの鼓動を知らない
69、67、…。
少しの変化を恐ろしく感じて、
ずっとモニターを見つめている
いつか、元気になったら、
あなたの心臓の鼓動を
直に感じてみたい。
だから、早く目を覚ましてね。
踊り狂って、舞台の上でこときれる。
そんな幸福を夢見て、
私は今日も踊るのです。
アンコールは何度でも。
爪先が擦り切れようと、
指の一つが折れようとも。
いつか、その時が来たら、
貴方が私の体を燃やしてくださいね。