「夢と現実」
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ
夢と知りせば 覚めざらましを
高校の授業で習ったこの歌が忘れられない。
当時、後半部分で言われている
「夢と知っていたら目を覚まさなかったのに。」
という、この言葉に私は思いを馳せた。
今も昔も、人は眠れば夢を見るのだと。
目が覚め、それが夢の出来事だったとき。
人は夢に焦がれるもの。
夢という眩しいものに魅せられて、
現実という厳しい世界に寂しさを覚える。
時代が変わり、世界が変化していっても、
人が漠然と抱く寂しさには変わりがないのだと。
そんなことを思いながら、その後の授業中は
頭の中でずっとこの歌を口ずさんでいた。
「さよならは言わないで」
言いたいことはありすぎた。
でも、言い残せる時間は残り少ない。
ごめんね、先に逝く僕を許してほしい。
僕のことを愛してくれて、ありがとう。
君の心に生き続けたいから、さよならは言わない。
「…ずっとずっと、大好きだよ」
「光と闇の狭間で」
君が幸せでいてくれたらと願う僕と、
君もここまで堕ちてくればいいのにと乞う僕がいる。
この天秤は今はどっちにも振り切れていない。
振り切ってしまえば楽かもしれないけど、
振り切れないままでいたい気もする。
だって、この狭間にいる限り君を愛し続けられる。
「距離」
実家の大掃除をしたら中学の卒業アルバムがでてきた。
思い出すのは、初恋のあのひとのこと。
誰にでも優しくて、正義感あふれる人だった。
いつも教室の真ん中で人に囲まれてるのに、
端っこで苦しんでる人をひとりにしない人。
教室の隅で苦しんでた私の心を助けてくれた人。
好きだと言えずに、ただただ目で追ってた。
あなたの影に触れるだけで幸せだった。
卒業アルバムのホコリを払い、ページをめくる。
卒業アルバムの最後のページのフリーページに、
みんなで言葉を寄せ書きし合うのが恒例だった。
きっと、私のフリーページに寄せ書きしてくれた
同級生の数は他の誰よりも少なかった。
でも、この寄せ書きページに私は感謝してる。
当時、誰にも書いてと頼めずにいた私のところに
初恋の彼が来てくれて、
「俺、字超でかいけど書いてもいい?」
頷くと、彼はニカッと歯を見せて笑った。
油性マジックがキュッキュッと音を立てて、
私の寄せ書きページを埋めていく。
『俺のこと、さん付けで呼ぶの君くらいだけど、なんかこそばゆくて嬉しかった!!高校でも元気でな!!!』
彼は宣言通り超がつく大きな文字で私のフリーページを
ひとりで埋め尽くしてくれた。
私は少しだけ薄れてるその字をなぞり、鼻歌を歌った。
「あの頃の生き方を、あなたは忘れないで
あなたは、私の、青春そのもの」
「泣かないで」
やまない雨はないから、いつかこの涙も枯れるはず。
願わくば、いつかじゃなくて今枯れてほしい。
今すぐに涙を流した痕跡全て消し去ってほしい。
そしたら、あなたに言ってあげるの。
「私なら大丈夫」って、笑顔で言ってやる。
でも、現実は涙でグシャグシャの顔だから。
泣きながら「大丈夫」と言ってもカッコ悪いだけだった。
大丈夫、大丈夫だから、優しいあなたとの思い出で
私は生きていけるから大丈夫。
お願い、最後にあなたに見せる顔は笑顔がいいの。
だから、今だけでいい。出てくるな、涙。
困らせたくないの、最後まで笑っていたいの。
あなたにも、笑っててほしいの。
「…昔も今も、これからも、、、大好きよ」
そういって私は泣きながら笑ってみせた。