佐倉光潤

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12/1/2023, 11:41:52 AM

「距離」

実家の大掃除をしたら中学の卒業アルバムがでてきた。

思い出すのは、初恋のあのひとのこと。

誰にでも優しくて、正義感あふれる人だった。

いつも教室の真ん中で人に囲まれてるのに、

端っこで苦しんでる人をひとりにしない人。

教室の隅で苦しんでた私の心を助けてくれた人。

好きだと言えずに、ただただ目で追ってた。

あなたの影に触れるだけで幸せだった。



卒業アルバムのホコリを払い、ページをめくる。

卒業アルバムの最後のページのフリーページに、

みんなで言葉を寄せ書きし合うのが恒例だった。

きっと、私のフリーページに寄せ書きしてくれた

同級生の数は他の誰よりも少なかった。

でも、この寄せ書きページに私は感謝してる。

当時、誰にも書いてと頼めずにいた私のところに

初恋の彼が来てくれて、

「俺、字超でかいけど書いてもいい?」

頷くと、彼はニカッと歯を見せて笑った。

油性マジックがキュッキュッと音を立てて、

私の寄せ書きページを埋めていく。

『俺のこと、さん付けで呼ぶの君くらいだけど、なんかこそばゆくて嬉しかった!!高校でも元気でな!!!』

彼は宣言通り超がつく大きな文字で私のフリーページを

ひとりで埋め尽くしてくれた。





私は少しだけ薄れてるその字をなぞり、鼻歌を歌った。

「あの頃の生き方を、あなたは忘れないで

          あなたは、私の、青春そのもの」

11/30/2023, 11:56:41 AM

「泣かないで」

やまない雨はないから、いつかこの涙も枯れるはず。

願わくば、いつかじゃなくて今枯れてほしい。

今すぐに涙を流した痕跡全て消し去ってほしい。

そしたら、あなたに言ってあげるの。

「私なら大丈夫」って、笑顔で言ってやる。

でも、現実は涙でグシャグシャの顔だから。

泣きながら「大丈夫」と言ってもカッコ悪いだけだった。

大丈夫、大丈夫だから、優しいあなたとの思い出で

私は生きていけるから大丈夫。


お願い、最後にあなたに見せる顔は笑顔がいいの。

だから、今だけでいい。出てくるな、涙。

困らせたくないの、最後まで笑っていたいの。

あなたにも、笑っててほしいの。

「…昔も今も、これからも、、、大好きよ」

そういって私は泣きながら笑ってみせた。

11/29/2023, 1:54:12 PM

「冬のはじまり」


きれいに色づいた紅葉が終わり、病葉が落ち始める。

クリスマスやお正月まではまだちょっと遠い

このちょっとしんみりした空気がなんとなく好き。

ちょっとだけさみしい私が許される気がするから。

冬がはじまれば、私の抱えている人に言えない感情も

白い息に溶けて空に消えていく。

今年もはやく、冬がはじまればいい。




○○○○私の話○○○○

冬って聞くと、「雪が溶けると何になる?」という

質問を思い出します。

「水」という答えもありますが、

私は「春」と答える人に惹かれます。

(私自身は初めてこの質問されたとき「水」と答えました)

雪が溶けて、水になれば、春が訪れる。


現実的な人、先を見据える人、夢をみる人…

私が知っているよりも、もっともっと色んな人がいて、

世の中にはたくさんの疑問や謎があふれてて、

疑問の答えも一つじゃなく人の数だけある。

そんな当たり前のことを、この質問を受けたとき

私は知り、嬉しくなりました。

と、いう自分語り失礼しました(笑)

11/28/2023, 3:43:59 PM

「終わらせないで」

あなたはいつも勝手だった。

告白してくるタイミングは最悪。

トイレの前で普通告白する?

付き合ってからも勝手だったよね。

デートはサプライズという名のミステリーツアー。

場所を勝手に決めるわ、ロマンチックの欠片もない場所。

誰があんなクソ暑い日に秘密基地作るのよ、小学生か!

それでも、いつも表情がクルクルかわって、

それを隣で見てるのは楽しかった。

私のことを好きだと全身で表現してくれるあなたに、

そっけない態度ばかりとる私。

そんなところも好きだと言ってくれるあなたに

私は、甘えてしまっていた。


でも、あの日から変わってしまった。

変えてしまったのは、きっと私の放ったあの一言。

「あなたのそういうとこ、だいっきらい!」

それから、あなたとの連絡がとれなくなった。

当然、全身で表現されてた愛情がなくなって、

サプライズデートで振り回されることもなくなった。

なのに、可愛げない私は、ごめんって言葉すら

どうしても素直に口に出せなかった。


だから、当たり前のことだと思う。

あなたに会えないのが寂しくて、

連絡しても既読つかないことが悲しくて、

あなたの面影探して、あのクソ暑い日に作った

秘密基地まで行ったら、壊されてた。

近くに、廃材のように転がった秘密基地の残骸。

私は近くに転がってる秘密基地の残骸をひとつひとつ、

拾い集めながら静かに涙を流した。

次もし会えたらちゃんと素直になる。

可愛げはないかもしれないけど、きちんと謝る。

だから、だから。

「………どうか、どうか、まだ終わらせないで」



○○○○○その後の話○○○○○○


「あっ」

ふと、声に気付いて顔を上げると松葉杖のあなたがいて、

泣いたままの顔で見上げた私に驚いたあなたは、

あわてて近づいてきてくれた。

「どうしたの!?お腹でも痛い!?それとも、えーと、、

って、、、え?」

いつもと変わらない態度の彼に、私は抱きついた。

「本当にどうしたの!?大丈夫??やっぱり、どこか…

「ごめんなさい!!ごめんなさい、ごめんなさい。

わがままばかりで、可愛げないけど、

私、あなたのこと手放したくないよ…」」

彼は困惑してたけど、おずおずと抱きしめ返してくれた。

「なにを心配してるのか、よくわからないけど、大丈夫。

僕も君を手放す気はないよ?」

「……………は!?だって、ずっと連絡しても既読すら

つけてくれなかったじゃない!」

「えっ君から連絡くれてたの?嬉しいなぁ。

実は僕、君と最後にデートした日に事故にあっちゃって

スマホずっと見られなかったんだよね」

そういって、松葉杖を手のようにヒラヒラさせた。

「…知らな、かった。私自分のことばっかで、

そんな可能性考えてもみなかった…ごめん」

「ううん、僕も電話とかで連絡しなくてごめんね。

…ちょっと意地悪したくなってさ」

「………は?」

「だって、君、僕のこと嫌いっていった。

正確には、だいっきらい、って言ったかな?」

「それはっ、、、ごめん、なさい。」

びっくりしたような顔をした。

「うん、いいよ。そっけない君も大好きだから。

さて、秘密基地壊れたみたいだし、直そうか!」

「は!?あなた松葉杖でしょ!?」

「大丈夫大丈夫、骨折だから♪」

「なにも大丈夫じゃない!」




私は、勝手で自由なあなたが好き。

あなたは、そっけなくて可愛くない私が好き。

変わり者同士ある意味お似合いかもね(笑)

11/26/2023, 11:54:32 AM

「微熱」

ほんのり朱に染まった頬。

じんわり汗ばむ額。

潤んだ瞳で見つめるのは彼、、、

ではなく、無機質な天井。



「………さみし。」

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