佐倉光潤

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「終わらせないで」

あなたはいつも勝手だった。

告白してくるタイミングは最悪。

トイレの前で普通告白する?

付き合ってからも勝手だったよね。

デートはサプライズという名のミステリーツアー。

場所を勝手に決めるわ、ロマンチックの欠片もない場所。

誰があんなクソ暑い日に秘密基地作るのよ、小学生か!

それでも、いつも表情がクルクルかわって、

それを隣で見てるのは楽しかった。

私のことを好きだと全身で表現してくれるあなたに、

そっけない態度ばかりとる私。

そんなところも好きだと言ってくれるあなたに

私は、甘えてしまっていた。


でも、あの日から変わってしまった。

変えてしまったのは、きっと私の放ったあの一言。

「あなたのそういうとこ、だいっきらい!」

それから、あなたとの連絡がとれなくなった。

当然、全身で表現されてた愛情がなくなって、

サプライズデートで振り回されることもなくなった。

なのに、可愛げない私は、ごめんって言葉すら

どうしても素直に口に出せなかった。


だから、当たり前のことだと思う。

あなたに会えないのが寂しくて、

連絡しても既読つかないことが悲しくて、

あなたの面影探して、あのクソ暑い日に作った

秘密基地まで行ったら、壊されてた。

近くに、廃材のように転がった秘密基地の残骸。

私は近くに転がってる秘密基地の残骸をひとつひとつ、

拾い集めながら静かに涙を流した。

次もし会えたらちゃんと素直になる。

可愛げはないかもしれないけど、きちんと謝る。

だから、だから。

「………どうか、どうか、まだ終わらせないで」



○○○○○その後の話○○○○○○


「あっ」

ふと、声に気付いて顔を上げると松葉杖のあなたがいて、

泣いたままの顔で見上げた私に驚いたあなたは、

あわてて近づいてきてくれた。

「どうしたの!?お腹でも痛い!?それとも、えーと、、

って、、、え?」

いつもと変わらない態度の彼に、私は抱きついた。

「本当にどうしたの!?大丈夫??やっぱり、どこか…

「ごめんなさい!!ごめんなさい、ごめんなさい。

わがままばかりで、可愛げないけど、

私、あなたのこと手放したくないよ…」」

彼は困惑してたけど、おずおずと抱きしめ返してくれた。

「なにを心配してるのか、よくわからないけど、大丈夫。

僕も君を手放す気はないよ?」

「……………は!?だって、ずっと連絡しても既読すら

つけてくれなかったじゃない!」

「えっ君から連絡くれてたの?嬉しいなぁ。

実は僕、君と最後にデートした日に事故にあっちゃって

スマホずっと見られなかったんだよね」

そういって、松葉杖を手のようにヒラヒラさせた。

「…知らな、かった。私自分のことばっかで、

そんな可能性考えてもみなかった…ごめん」

「ううん、僕も電話とかで連絡しなくてごめんね。

…ちょっと意地悪したくなってさ」

「………は?」

「だって、君、僕のこと嫌いっていった。

正確には、だいっきらい、って言ったかな?」

「それはっ、、、ごめん、なさい。」

びっくりしたような顔をした。

「うん、いいよ。そっけない君も大好きだから。

さて、秘密基地壊れたみたいだし、直そうか!」

「は!?あなた松葉杖でしょ!?」

「大丈夫大丈夫、骨折だから♪」

「なにも大丈夫じゃない!」




私は、勝手で自由なあなたが好き。

あなたは、そっけなくて可愛くない私が好き。

変わり者同士ある意味お似合いかもね(笑)

11/28/2023, 3:43:59 PM