楽園_48
花が咲き、どきどきする香りが漂う。
足を踏み出せば全身は、びくりとして-。
君の太ももには私の手が置かれ、
あの花の香りが首元で近くに感じる。
すまない、と言って素早く身体を起こすが
どうにも恥ずかしくて耳が熱をもった。
時間は止まったようで
自分から変わらねば、何も変わらない。
それでも、私は怖くなってしまった。
やっとのことで一歩を踏み出したものが、
夢であったために。
生きる意味_47
いま、隣に座っている君に
私はいつも教えられていた。
頭をことん、と私の肩に添える。
それは何よりもあたたかくて、優しいのに
なにかが空っぽであるように感じさせた。
昨日は私と君だった。
だから今日、
私は生きる意味を、失った。
たとえ間違いだったとしても_46
ネオンが眩しく反射する
あついアスファルトの上を、車で走らせる。
お前をはじめて助打席に乗せたのは、
もう何年か前のことだったな。
あの時は彼氏がいるやら、
気になってる後輩がいるやらで、
どうにも乙女に見えた。
この関係が始まったのも、続いているのも
その理由は埋もれていくだけ。
俺にとって、
理由は他人事のように思えていたんだ。
決まった日には
誰も、何も、考えられなくなるように、
身体が変になりすぎるくらいに、
お前の全てを受け止めてやった。
それが、いつからか日常となり
居て当たり前の存在となり
感情もなしに、
ただこなしていくだけになった。
どこで間違えたのだろうか。
-君が好きだった僕は。
たとえ、この手が間違いだったとしても
「君のそばにいた方が良い」
と言ってならなかったのは、
僕が一番君を知っていたからだと思う。
そう、くだらない話を思い出していた時、
すぐ横の窓から
お前の乱暴なノックが頭に響く。
一つ息を吐いてから窓を開ける。
ガソリンや排気ガスの咽せる臭いと
甘ったるく、熟しきったフルーツのような
香水の匂いがした。
無色の世界_45
初めて見かけた時は好印象で
高い背は私を包んでくれそうに思える。
だから私は 貴方に抱擁を求める。
無色が少しでも彩られるだろうと信じて。
それでいい_44
朝が怖い。
怖くて 怖くて仕方がない。
何が怖い?言葉にできない。
それが怖い。
だからと言って 夜は怖くない訳じゃない。
夜は「朝が怖い」と思いながら
涙を流す。
そうしてるうちに 朝が来る。
勝手に。
なんでだろうね。
昼は少し たのしい。
人も時間も 比例して動く。
あぁ。
このままは多分 駄目なんだろうなぁって。
でも また夜は来る。
疲れたなら休む。
嫌なら休む。
それでもいいんだ。