My Heart_39
君が僕の心を盗んだんだ。
僕は誰よりも君の心を満たせる。
もしもの場合であっても。
先客よりも
友よりも
特別な存在でいたい。
隣の隣に座る君が好きだ。
好きじゃないのに_38
好きで聴いてるわけじゃないその曲は
君がプロフィールに設定していた。
僕は音楽の知識は義務教育止まり。
リズム感だとか何かの旋律が良かったのか
というのは分からない。
ただ どうしても
気にせずにはいられなかった。
歌詞。
何度も何度も
“やり直したい” “あの頃に戻れたら”
そんな 今の僕から目を背けたい
と言っているような歌詞が
時間のようだと思った。
とんとん拍子に流れ続け
身体の芯が冷やされると 汗ばんだ。
数年経った今も
その曲は毎日リピートされ続けている。
何百回聴いただろうか。
何千回聴いただろうか。
そんなこと数えてもきりがない。
それでも僕は聴き続けるだろう。
捨てきれない歪んだ愛を握りしめて。
ところにより雨_37
この季節に雨は降らないでほしかった。
水溜まりには桜の花びら。
それは透明になりつつある。
雨の日は傘を差す。
だが 今日は差したくないと思った。
いつもは濡れる左肩も
しっかりと
傘におさまってしまうだろうから。
特別な存在_36
貴方はどの男よりも魅力的だった。
それでも憎く見られているのは
「恋はしたくない性分なんでね」
と決まり文句のように
告白された返事として言っていたからだ。
それと 他の女の子たちは知らないだろう。
その男が同性愛者だということを。
今の時代 性に関する事柄を言うのは
ちょっとばかり怖い気もするが
物語の内容が分かりやすくなるような
言葉選びをしているのである
ということを承知してほしい。
私はその言葉に関して詳しくもないし
彼がそうだったのだと気づくのは
彼自身から実はな…
と言ってきた時だった。
私はそこまで驚こうとは思わなかった。
別におかしくもないんだろう
と感じたから。
それを感じた私の顔を見て
何がわかったのか 彼は安堵した。
「なぁ
付き合ってと言われたら
正直に嫌だと返事をするか?」
一瞬都合のいい妄想が広がる。
なんだ。また惚気かよ。
そうは言っても 毎日何人ものペースでは
流石にキツいのか…とも思う。
だから私は
『いいや
「恋は嫌いだ」とか
「恋はしない性分なのでね」と言うよ』
彼は最近見せなかった笑顔をして
笑った。
「そうか。ありがとう。
…」
何か言いたげな口ごもりをしていたが
私は気にしなかった。
誰の彼氏でも 彼女でもない彼。
そんな彼の方が 良いのかもしれないと
信じきっていたから。
ただ 私は彼の特別な存在でいるだけで
嬉しかった。
そんな自分勝手な考え方が
彼の欲望を掻き立ててしまった
そう気づくのは この先近い未来のはなし。
泣かないよ_35
本当は明日、出かけたかった
なんて言わない。
予定がたくさん詰まってて
疲れてるだろうところに
僕のこんなワガママは言ってはいけない。
それでも、君は
僕が本音を隠してることを
既にお見通しだと言わんばかりに
「大丈夫だよ。気にしないで。
いつか休んで、行きたい所まわろうよ。」
って僕の目の奥を覗くように言う。
本音ってすごく言いづらいし、
勇気がいる。
だからこそ重要で、思った時に言うべきだ
と思う。
僕は本音を言おうとすると
涙が出てくる。
でも君の前では、頑張ってみようと思う。