星が溢れる_34
“世の中は理不尽で
上手くいかないことなんか山ほどある。
だけど大人は楽しいんだ。”
そう習ってきた。
教えられた。教わった。
でも なんのどこが楽しいか。
それまで教えてくれる大人は誰一人として
いなかった。
“辛いだろう。大丈夫。
明るい未来が待ってる。”
これは勝者のセリフだ とよく耳にする。
死人に口なし。
この言葉が証明していることだろう。
これらを踏まえて だ。
共通点はなんだ?
あぁ また授業みたいになった。
これもまた 大人の仕業だ。
私たちがこれからの人生も
強く生きてほしい と願う大人の。
だが それの一部の そのまた一部。
それだけが 私を殺そうとする。
「悪気はないのに。
ワタシはただアドバイスをしただけ。
ワタシの周りの子を虐めないで。」
そんな自己中心的な考えをした大人。
私のことを
人としても見てくれない大人が。
無視をしてくるだけなら有り難い話だ。
ここで クソ彼氏と同じ理論が
これをまた証明してくれる。
“ボクは浮気するけど
君はボクだけを見ててね。”
とにかく卑怯で 理不尽だ。
ワタシが無視をするのは良いが
貴様は従って尽くしたまえと。
もう意味がわからない。
何度も何度も
あらゆる方法を考え 想像した。
失敗する。
考えれば考えた分。
そんな時に
「どうせ死ぬんだから
好きなように生きよう」
という言葉を聞いた。
きっと勝者はここで
“その言葉を聞いて人生が変わった”
とでも言うのだろうか。
だがやはり その時の私にとって
それは なんの支えにもならなかった。
ある日の晩。
いつものように湯船に浸かって
想像する。
このまま 今日は眠いと嘘を吐き
家族が寝に来る前 吊るされれば
楽だろうか。
よくドラマで見るドアノブの方法。
あれをシュミレーションする。
ここで自分がいつもよりも鮮明に
かつ何が必要で 誰がどう思うかまで
容易に考えられる事に驚く。
そこでやっと覚悟を決めたのだ。
そして何より
共通点を見いだせた。
それは上の者が放った言葉である事。
どちらもスタートラインから
高さが違った。
上にいれば下るだけ。
下にいれば上らなければならない。
やはり
世の中は理不尽だ。
目に見える顔は星のように輝く。
それでも 目に見えない顔は
宇宙の端までに暗いかもしれない。
何を書きたいのか
何を伝えたいのか
ここまで長く綴る中で分からなくなった。
それは私が弱い人間だということを証明する。
だが 一人でも
この生きづらい社会で
生き延びられると感じられたら
私は笑顔で待っていられることと思う。
欲望_33
依存とは
依存先が一つのみの状態を指しており
それを二つ三つと増やす事で抜け出せる。
そう聞いたことはないか?
私は前者を極めすぎたようで
今に足をかけた。
-あの日
友人の 硝子で作られた杯のような
薄く 非常に脆いナニカを
割ってしまった。
周りの背景となりし友からの慰め。
それも相俟って
私が裏切ったからだ
と言わんばかりの
光が入る隙間もない瞳を見た。
それは
何を言っても修正が効くわけない
と静かに怒っているようだった。
それから私は いつもより
はるかに明るく振る舞い
古い杯を捨て 新しく作り直そうとした。
だが それもただ夢であった。
友人は泣いて 人に助けを求める。
私のことなど
突拍子もなく道路に飛び出て
轢かれて死ぬカエルだ
と言っているようだった。
友人よ。
私に依存をしなくたって
生きていけるのは良かったな。
友人よ。
一緒に生きるのなら
一緒に死ぬのも当然だろう。
友人よ。
何故 私の依存先ばかりを減らす。
友人よ。
私は この先 どうすれば良いのか。
友人よ。
私は貴方に欲望を晴らしてほしいと
願って 願って 願い続ける。
この足が怯み 堕落するまで。
伝えたい_32
ベロニカは私が殺したんだ。
私が 殺したんだ。
3年前に交通事故で私の妻は死んだ。
ベロニカという名は
妻がよく庭で慈しんでいた花から
ニックネームとして採用した。
私は別に呼び捨てで良かったのだが
それでも妻は断固として
恥ずかしいと言い張っていた。
そんなところも
愛おしく思っていた頃
それが起こった。
気がつけば この辺で1番大きい病院で
あらゆる箇所にチューブが繋げられ
白いベッドに身を委ねている妻が
僕の目に入った。
また気がつけば
もう 今に至った。
時は待ってくれないらしい。
だが これまでの出来事が
可笑しいということに気がつき始めた。
警察は私を一度だけ取り調べ
動機がないだの
アリバイがあっただので
逮捕しようとしなかった。
何故だ?
なぜ伝わらない。
何がこの私の身に起きていると言うのだ。
いいから早く
私を捕まえてくれ。
(続編は気が向いたら書きます)
1000年先も Kiss_31
『ベロニカ… ベロニカ!』
珍しく昼休憩に仮眠をとっていた教授は
何度もその言葉を放っていた。
額に脂汗をかき いかにも
悪夢を見ていました という空気が重い。
「教授 大丈夫ですか?
だいぶ うなされていたようですけど…」
机に伏せて寝ていたせいで
彼の顔にはシャツの皺がついていた。
『あぁ…。
私は何か寝言を言ってなかったかね?』
まだ寝起きで目を細めてはいたが
確実に瞳が泳いでいた。
それから推測するに
彼は動揺を隠せていない。
「いいえ。
とても静かでしたよ。」
私は最善の選択をした。
私は彼の過去を
1000年先も知ることはないだろう。
だが 私はそれが悔しくて
憎くてしょうがない。
それならばと
記憶を呼び起こす口を封じるように
目にかかる髪をどかし
私は教授にキスをした。
勿忘草_30
君が握る勿忘草を 僕は受け取れない。
やっぱり君は優しかった。
君は少し背が低いから
僕の腕にはすぐ包まれてしまう。
おもむろに君を起こし
抱き寄せて
胸の鼓動を感じる。
走ったのは久々だったから
喉が痛く乾いて
胸の鼓動は外にも聞こえるほど速かった。
ここは君と初めて会った公園だ。
勿論 覚えている。
小学生の頃から 君は誰よりも優しかった。
優しいからこそ
君は自分を閉じめて続けてしまった。
僕はそれに 気づけなかったんだ。
情けないよな。
弱いよな。
かっこ悪いよな。
君が朝陽でシルエットとなった時
僕の目頭は熱くなり 辺りが歪む。
今も冷たくなっていく君を抱きしめて
ただ泣くだけ。
僕はいつまでも弱かった。