ヒラガ

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1000年先も Kiss_31


『ベロニカ… ベロニカ!』

珍しく昼休憩に仮眠をとっていた教授は
何度もその言葉を放っていた。

額に脂汗をかき いかにも
悪夢を見ていました という空気が重い。

「教授 大丈夫ですか?
 だいぶ うなされていたようですけど…」

机に伏せて寝ていたせいで
彼の顔にはシャツの皺がついていた。

『あぁ…。
 私は何か寝言を言ってなかったかね?』

まだ寝起きで目を細めてはいたが
確実に瞳が泳いでいた。
それから推測するに
彼は動揺を隠せていない。

「いいえ。
 とても静かでしたよ。」

私は最善の選択をした。

私は彼の過去を
1000年先も知ることはないだろう。

だが 私はそれが悔しくて
憎くてしょうがない。

それならばと
記憶を呼び起こす口を封じるように
目にかかる髪をどかし
私は教授にキスをした。

2/4/2024, 9:59:00 PM