特別な存在_36
貴方はどの男よりも魅力的だった。
それでも憎く見られているのは
「恋はしたくない性分なんでね」
と決まり文句のように
告白された返事として言っていたからだ。
それと 他の女の子たちは知らないだろう。
その男が同性愛者だということを。
今の時代 性に関する事柄を言うのは
ちょっとばかり怖い気もするが
物語の内容が分かりやすくなるような
言葉選びをしているのである
ということを承知してほしい。
私はその言葉に関して詳しくもないし
彼がそうだったのだと気づくのは
彼自身から実はな…
と言ってきた時だった。
私はそこまで驚こうとは思わなかった。
別におかしくもないんだろう
と感じたから。
それを感じた私の顔を見て
何がわかったのか 彼は安堵した。
「なぁ
付き合ってと言われたら
正直に嫌だと返事をするか?」
一瞬都合のいい妄想が広がる。
なんだ。また惚気かよ。
そうは言っても 毎日何人ものペースでは
流石にキツいのか…とも思う。
だから私は
『いいや
「恋は嫌いだ」とか
「恋はしない性分なのでね」と言うよ』
彼は最近見せなかった笑顔をして
笑った。
「そうか。ありがとう。
…」
何か言いたげな口ごもりをしていたが
私は気にしなかった。
誰の彼氏でも 彼女でもない彼。
そんな彼の方が 良いのかもしれないと
信じきっていたから。
ただ 私は彼の特別な存在でいるだけで
嬉しかった。
そんな自分勝手な考え方が
彼の欲望を掻き立ててしまった
そう気づくのは この先近い未来のはなし。
3/23/2024, 10:51:27 PM