「あー、電球とうとうきれたか。新しいのあるか?俺がつけてやるよ。お前ちっさいし。」
そう言って私のことをおちょくるこの男は私の想い人。
2年も会う度に「好き」だと伝える私に「蝶よ花よと育てられたお前に俺みたいな男は不釣り合いだよ。友達くらいが丁度いい。」といつも笑ってはぐらかす。好きじゃないならそう伝えてくれればいいのに。はぐらかされると希望が捨てられないじゃない。
でも、もう疲れた。思い続けるのも、希望を抱き続けるのも。
彼は鼻筋が通って、鋭くでも優しく綺麗な二重の目。瞳の奥はいつもどこか寂しそうで私の心を掴んで離さない。
「ありがとう。」私はおちょくられたことはスルーして電球を手渡す。
彼は不思議そうに私の顔を覗き込む。
「お前体調悪かったりする?」心配そうに眉をひそめ私を見つめる。
いつも会うと「好き!」と言い続けていたのに、今日は言わなかったことに気がついたのだろう。こうやって私の心の機微を感じ取ってくれる彼が好きだった。
「もしかして会ってない間、何かあった?」彼は私の頭をぽんぽんと子供をあやすような優しい声と手つきで問いかける。この大きくたくましい手が好きだった。少し掠れた低い声が好きだった。そう再確認させられた私の心は、雑巾を絞った様にギュッと締め付けられた。
確かに、あっていない数週間の間で私は変わった。そしてそのことを彼に伝えないと。
「あのね、私彼氏が出来たの。」まだ心のどこかで彼のことが好きだと叫んでるのを聞こえないふりして、私はどことなく引き攣った笑顔で彼に伝える。
「そっか…」目が泳いで動揺を隠せない様子だった。いつも感情が表に出ない彼には珍しいことだった。なんで貴方がそんな傷付いた顔をするの。捨てたはずの思いが、希望がまた再燃しそうだったが一生懸命抑えた。
「彼とはね、友達が紹介してくれて出会ったの。すごくいい人でね、私のこと一目惚れしたって言ってくれて。」私はつらつらと聞かれてもいない彼氏との出会いを語った。話続けないとこの空気に耐えれなかったから。
まだ本当は貴方が好きだと口が滑りそうだった
から。
彼の顔を見れずに私はただただ話し続けた。彼の目を見てしまったら、寂しそうな瞳に吸い込まれてしまうのではないかと危惧したから。
ずっと何も言わずに聞いていた彼が急に口を開いた。
「お前が幸せならそれでいいよ。」傷付いた心を誤魔化す様な笑顔をまたするから、私はそれを見ないふりしてキッチンへ向かった。
「コーヒー淹れようか!!」私がコーヒーメーカーに手を伸ばした瞬間、背後に温もりと同時に彼の匂いに包まれた。
「ずっと好きって言ってくれてたから、どこにも行かないって心のどこかで慢心してたんだと思う。他の男と一緒にいるお前を想像したくない。ずっと避けてたくせに、今更かよって思うかもしれないけど。いかないで。」ずっと聞きたかった言葉が背後から、苦しそうな辛そうな声で聞こえてくる。嬉しいはずの言葉が、どこか喜べず複雑で私の心はミキサーにかけられたようにぐちゃぐちゃだ。
2年も待った。私は伝え続けた。彼の思いは一時的な事で、きっと私が自分のものになった途端きっと気の迷いだったと思うでしょ?
だから言う。過去の私と決別するために。少しの貴方への思いを切り離すために。私は声を精一杯振り絞った。
「もう遅いよ、、、」
私を抱きしめる彼の腕が力強くなる。
それを私は振り払ってキッチンを後にした。
彼の寂しそうな後ろ姿を見ないようにベランダへ出た。そうでもしないと彼の胸の中に居心地の良さを覚えてしまう。冬の寒い風で彼の温もりを消すように全身に浴び続けた。
彼がそっとベランダの窓を開け「取り乱してごめん。帰るから、リビングに戻っておいで。ずっと風に当たってたら風邪ひくよ。」そう言って窓を閉めた。
わたしはずっと振り向けず背中で彼を見送った。
付き合っていなかったのに恋人とお別れしたような気分だ。
「さよなら。」玄関をでた彼に小さな声で別れを告げるのが精一杯だった。
テーマ 最初から決まってた
「私、結婚するの。」そうやって僕に微笑みかけたのは、10年片想いし続けた女性だ。
天使の様な微笑みと裏腹に、言っていることは僕の心に深く切り刻むナイフのような鋭利な内容だった。
彼女と初めて出会ったのは高校生の時。まだあどけない女の子だった。
肩までの艶やかな黒髪に真っ白な透き通った肌。肌から滲むようなピンク色の頬。一目惚れだった。
ずっと言いたかった。「キミが好きだ。」と。たったその一言を言えずにずっと君の友達の振りをしていた僕は弱虫だ。
彼女に恋人ができる度、心が張り裂けそうだった。
でも言い出せなかった。友達なら関係が永遠に終わらないと思っていたから。ただの僕の傲りだ。過信だ。
何度も伝えるチャンスはあった。でも言えなかった。
もし伝えていたら、君は僕の気持ちに応えてくれていたのだろうか。
いや、それはないな。最初から決まっていたんだ。
君は僕だけの君になることはないことを。
「おめでとう。」僕はめいいっぱいの笑顔で君を祝おう。君の友達として。
太陽があるから月が輝ける
暗闇があるから光が目立てる
朝があるから夜を越せる
木陰あるから暑い日差しの道も歩ける
過去の傷があるから優しくできる
哀しみを乗り越えたから慈しめる
親切心のない環境にいたから、些細なことでも感謝し愛することができる
地獄でも這いつくばり歩みを止めなかったから天国をみれた
諦めなかったから、希望を捨てなかったから光が見えた
つまらないことでも、笑っていよう。
そしたら少しは楽しく感じれるかもしれないから。
1年後、この片想いが実り、花咲かせてますように。
あなたの腕、あなたの声、あなたの全てを独り占めできますように。