パーティ全滅勇者

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テーマ 最初から決まってた


「私、結婚するの。」そうやって僕に微笑みかけたのは、10年片想いし続けた女性だ。

天使の様な微笑みと裏腹に、言っていることは僕の心に深く切り刻むナイフのような鋭利な内容だった。

彼女と初めて出会ったのは高校生の時。まだあどけない女の子だった。
肩までの艶やかな黒髪に真っ白な透き通った肌。肌から滲むようなピンク色の頬。一目惚れだった。

ずっと言いたかった。「キミが好きだ。」と。たったその一言を言えずにずっと君の友達の振りをしていた僕は弱虫だ。

彼女に恋人ができる度、心が張り裂けそうだった。

でも言い出せなかった。友達なら関係が永遠に終わらないと思っていたから。ただの僕の傲りだ。過信だ。

何度も伝えるチャンスはあった。でも言えなかった。
もし伝えていたら、君は僕の気持ちに応えてくれていたのだろうか。

いや、それはないな。最初から決まっていたんだ。

君は僕だけの君になることはないことを。


「おめでとう。」僕はめいいっぱいの笑顔で君を祝おう。君の友達として。

8/8/2024, 9:18:39 AM