やわらかな光
雨上がりの空。
空の日差しは、いつだって強くて、ギラギラしてる。眩しくて手で覆い隠しても、その熱さはやがて伝わり、じりじりと熱して焼けていく。
泣いた後の空。
やわらかな優しい光に包まれて、体はぽかぽかしてる。眩しくて手で覆い隠すと、視界は滲む。まだ、涙が拭えてなかった。
どっちも、水滴なのに。
感じ方は、大きく変わるのね…
相合傘
どうか、止まないで。
そう、切に願っている。こんな風に思えたのは、世界できっと、あなただけなんだよね。
雨の音にかき消される心臓と音。
重力に沿って雨が降り、傘には跳ねる雨の音。
あなたと聞くこの雨の音が、心地よくて、大好き。
ああ、止んでしまう。ぽつりぽつりと、消えていく雨の音すらも、尊くなる。
「雨、止んでほしくないね」
ああ、と曖昧に頷く私。雨の音、あなたも好きなの?あなたは、私と同じことを思っているの?どうして、あなたを守る傘に、私をも入れてくれた?
隣にいるのに、教えてほしいことばっか。
雨上がりの太陽って、どうして、こんなにも強くて、空は青いんだろう。日焼け止めも塗ってないのに、日焼けしてしまう。
でもそんなこと、どうだって、よかった…
優しくしないで。
私はもう、あなたが嫌いだ。
そんな風に、私に笑いかけるのはやめてよ。
まるで太陽みたいに尊いあなたの笑顔は、皆を幸せにする。皆に好かれているんだから、別に、私に笑いかけなくてもいいでしょう?
優しくしないで。やめてよ。
些細な優しさが、私を傷つけていく。「大丈夫?」って言われた雨の日も、落とした消ゴムを取ってくれた時も、胸が痛くてたまらなかったんだよ。
嫌いになれない。それが、いちばん苦しい。
「優しくしないでよ…だいっきらい…」
今日も私は、嘘をつく。
言葉にできない
世界は、言葉にできないもので溢れている。言葉にできるもんじゃないのに、人は言葉にしたがる。
人のことも、散る桜の美しさも、朝陽が昇る尊さも、人が人を想う気持ちも、全部全部―
言葉でなんか、表せてたまるか。
言葉にできなくていい。言葉も笑顔も世界の全ても全部忘れて、私は、あなたに会いに行くよ。
ああ、なんだろう。言葉にできないなぁ…
何気ないふり
あなたに、ずっと嘘ついてた。
笑顔を繕って、自分じゃない誰かになろうとした。
あなたが好きになった人は、私じゃないんだよ。それは、本当の私じゃないから。そう思うと、心がとてもとても、辛くて怖くて仕方なかった。
だから、何気ないふりをした。そしたら私の感情や心はどんどん失くなっていった。
ごめんなさい、ごめんなさい…
何回でも謝るから。こう生きることしか、私にはできなくて、ごめんなさい。あなたを知れば知るほど好きになっていく自分が、嫌いになってく。
「んなの気にしてんの?そのままでいいんだよ」
「嘘でも、ほんとの感情じゃなくてもいいの?私は、全部作り物なんだよ?」
「いいよ。君が本当の自分が出せたと思えたときは、その時は、もっと、俺は君のことが好きになってるだろうな。ふふ、楽しみだなぁ」
最初から、嘘でした。
私は、これが、本当の自分でした。
気づいた私は、何気ないふりをした。