飛べない翼
君は飛ぶことができない。
俺が閉じ込めてしまったから。
君が悪いんだ。
ふらふらとどこかへ行ってしまうから。
折れた羽を優しく撫でる。
なんでもないことの様に治療を施して、
そしてまたなんでもないことの様に折る。
最初から翼なんてなければよかったのに。
君が眠りから覚める。
何もわかっていない君に、
俺は心配そうな顔をして、優しくして、
君の心を閉じ込める。
ススキ
学校からの帰り道。
君が私の少し前を歩いている。
話しかける勇気なんてなくて、追いつかないようにゆっくり歩く。
周りを少し見渡せば、道には落ち葉が沢山。
道路脇にはススキがはえている。
少し立ち止まって、その風景を見ていたら、
君はどこか見えないところに行ってしまった。
脳裏
君が私の手を引いて階段を登る。
階段の先にとても幸せな何かがあるらしい。
「 」
君が何を言っているのかが聞き取れない。
でも、とても楽しそう。
私も楽しい。
「 」
何を話しているのかは分からない。
階段の先はもうすぐだ。
ゆめだ
違う。
いやだ。
目覚めたくない。
この先に私は行きたい。
君と一緒に階段を登り切りたい。
君はいつの間にか消えて。
階段は存在せず、
いつもの風景だけがそこにあった。
意味がないこと
私は去って行くあなたを見つめ続ける。
言いたかった言葉がある。
言わなければよかった言葉がある。
私はあなたを見つめ続ける。
あなたは一度も振り返らなかった。
あなたとわたし
あなたは誰ですか
私は鏡に向かって問いかけた。
返事が返ってくるとは思っていない。
自分が誰なのか。
それをあなたに教えて欲しいのだ。
鏡の向こうのあなたは、少し困った様に眉を下げた。
あなたはわたしですか
鏡に写っている私なのだから、私に決まっている。
そうではないのだ。
そう見えないから聞いている。
鏡の向こうのあなたは、困り顔のままだ。
わたしはあなたになれますか
鏡の中のあなたは一瞬驚いたかの様に目を開き、薄く微笑んだ。