これで最後
あなたがそこにいる。
私は今ここにいる。
私は終わらせに来た?
終わらせる。
楽しかった。幸せだった。
満ちていたし。好きだった。
だから、
終わらせなければならない。
あなたに変わって欲しくないの。
あなたは変わらないと言うけれど、
私は、
あなたは目覚めない。
もう終わったことだ。
君の名前を呼んだ日
名前、呼んでくれないの?
呼んで欲しいな。
彼女は拗ねている。
ねぇ聞いてるの?
聞いてるよ。
じゃあ呼んでよ。
はいはい。
呼んでないじゃん。
そうだな。
彼女は怒り始める。
なんで呼ばないの?
俺は彼女をみる。
どこか不安そうで、
このまま泣きそうな気もした。
俺は口を開いて、また閉じた。
優しい雨音
雨は嫌いだ。
全てを洗い流す。
自分の嫌なところも、いい所もだ。
自分だけしかいないように感じる。
何を思っても、想っても、
何を考えていたって、許される。
だって、流される。
流してくれる。
流されない?
それはもう、あなたの核、芯、軸。
流された時には、
あなたは、もういない。
また会いましょう
死にゆく人にこの言葉はどうなのだろう。
向こうで待っていて
待っていてなんて言葉で縛り付けるのは酷いのでは。
向こうは向こうで自由に過ごせばいい。
君にかける言葉が見つからない。
白い部屋、白いベッド、横たわる君。
いつもは繋がっている無数の機械は、今はもう一つだけだ。
君の細い手を両手で包む。
君はもう助からない。
知っていた。
君も知っていた。
天国なんてものはない。
来世なんてものもない。
そんな君にかける言葉を探し続けた。
スリル
高いところにいる。
一歩進めばストンと落下するだろう。
怖い。
大丈夫だよ。慣れれば楽しいから。
ほら。
君は叫び声を上げながら落ちて行く。
何が楽しいだ。
生きている実感が湧くだ。
怖いものは怖い。
だが後にも引けない。
一歩を踏み出す。
自分を殺す時が来るのならば、今の自分と同じ気持ちかもしれないと思った。