意味がないこと
私は去って行くあなたを見つめ続ける。
言いたかった言葉がある。
言わなければよかった言葉がある。
私はあなたを見つめ続ける。
あなたは一度も振り返らなかった。
あなたとわたし
あなたは誰ですか
私は鏡に向かって問いかけた。
返事が返ってくるとは思っていない。
自分が誰なのか。
それをあなたに教えて欲しいのだ。
鏡の向こうのあなたは、少し困った様に眉を下げた。
あなたはわたしですか
鏡に写っている私なのだから、私に決まっている。
そうではないのだ。
そう見えないから聞いている。
鏡の向こうのあなたは、困り顔のままだ。
わたしはあなたになれますか
鏡の中のあなたは一瞬驚いたかの様に目を開き、薄く微笑んだ。
柔らかい雨
君が傘をさして私の方へ振り向いた。
ほら入って
一緒の傘に入って歩くなど、いいのだろうか。
そう言う関係に見えるじゃないか。
いや、私はいいけれども。私は。
君も何を思ってそうしているのか。
私は一瞬の躊躇いの後、君の近くにいられるという欲に負けて、その傘の元へと急いだ。
歩く。
言葉はない。
雨の音が強い。
けれど、君がいると言うだけで。
私はそれだけで。
鏡の中の自分
鏡の前に立ってニコッと微笑む。
今日も私は可愛い
可愛い私は好きだ。
鏡の前で1度立ち止まって下を向く
今日は調子が悪い。
外には出ないでおこうか。
鏡の前で今日の自分を観察する。
今日の私は可愛い。
よかった。
まだ私は大丈夫。
街中を歩く。
みんな可愛い。みんなかっこいい。
見た目が全てとは言えないけれど、
見た目が良くなければ全て否定される。
街中を歩く。
醜い人は存在しない。
そう。そんな人はいない。
だって視界に入らないから。
少し立ち止まって観察する。
醜い人は存在しない。
だって外に出ないから。
人の目に映らないように自分から姿を消すの。
不安になり鏡を見る。
私は存在する権利があるだろうか。
永遠に
君は目覚めない。
それを私は知っている。
君は棺の中に静かに横たわっている。
やっとだ。
私は片膝をつき、より近くから君を見つめる。
そう。
私は永遠など信じないのだ。
君は嘘をついた。
違う。
私が本当にしてしまえばいい。
でも私はあのままでいたかった。
君の頬に手をすべらせ、ぎこちなくほほえむ。
ずっと、
永遠に、
一緒だと。