彼は雨を見て言った。
「空が泣いてるね」
初めはよく分からなかったが、次第に脳が理解してきた。彼は文才かなにかか?
「随分とかっこいい言い方するじゃん」
「ん?まぁ、そういう表現の仕方勉強してるし」
「勉強? なんでそんなこと……」
「俺、小説家になりたいんだ」
会話をしているうちに、初めて聞くことがでてきた。
小説家になりたい、だなんて今までで1度も聞いたことがない。
どうやら家でもちまちま小説を書いているのだとか。
だからそんなに素敵な表現が出てくるのか、と感心と納得をした。
―――数年後
地面を打ちつける雨を見て、
(あ、空が泣いてる……)
と感じた。
そういえば彼は元気にしているのだろうか。
と思った矢先に、目の前の本屋が目に入った。
壁にはPOPが数枚貼られている。
その中の一枚に……
『―――のデビュー作「空が泣く」 300万部突破』
【空が泣く/2024.9.17】
年に一度しか会えない、彼との特別な夜。
地上では今年も雨らしいけれど、私からしたら逆に嬉しい。
橋の真ん中で、彼の手を取る。
「今年も会えて嬉しいわ、彦星様」
「僕も嬉しいよ、織姫」
そっと優しく口付けをする。
一年ぶりの感触。
天の川に一年に一度だけ架かる橋で、彼と2人。
世界で一番幸せで、特別な夜。
【特別な夜/2024.1.21】
美しい、と初めて思った。
静かにゆっくりと流れる紅黒い血液。
わたし、生きてるんだ。
改めて実感した。
【美しい/2024.1.16】
どうして。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!
たすけてよ……っ
そう叫んでも
誰の元にも届かない。
どうしてこんなことになっちゃったんだろうなぁ。
【どうして/2024.1.14】
『友達をたくさんつくろう!』
小学四年生の頃の学級目標。
たくさん作ったらなにかいいことがある?
逆に作らなかったら悪いことでもある?
『つくらないひとはおかしい』
という概念が当時のクラスの中でできてしまった。
俺は人と関わるのが苦手だった。今でもそうだ。人と関わろうとしても、俺には協調性がないから何もわからない。気づいたら失言ばかりしていて周りから人がいなくなる。一人でいるほうが正直言って楽だ。
そんなある日のこと。
クラスの学級委員の田中美央が話しかけてきたのだ。
「ねぇ、キミ」
「…………何」
「私と友達にならない?」
…いきなり何を言っているんだこの人。俺には理解ができなかった。
とにかく俺は断った。一人でいたいから。それでも田中美央は話しかけてくる。何度も「友達になろう」と言ってくる。
はぁ、しつこい。
俺は一人でいたいんだ。話しかけないでほしい。
「学級委員の田中さん」
「!?な、何…?」
「俺は何回言われても友達になんてならないから。一人ている方が楽なんだ」
「………………じゃん」
「え?」
田中美央は何かを小さくつぶやいた。俺は思わず聞き返す。
だが、聞き返したことを後悔した。
「名前覚えてるってことは友達じゃん!」
「っ、はぁ?」
予想外の返答が来たのだ。友達の基準が低すぎじゃないか?
「これからよろしく!鈴木海斗くん!」
「チッ…。」
一方的な友達関係が生まれてしまった。
正直言って最悪だ。でも。
意外と「悪くない」と思ってしまった。
友達という関係性がなんだかんだ言って一番難しいのではないだろうか…。
【友達/2023.10.25】