朝倉 ねり

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11/21/2025, 12:09:00 PM

『夢の断片』

「お前は外へでてはいけないよ。悪い人間に食われてしまうから。」
お前の体は宝石で出来ている。
涙は真珠、血はルビー。肌は石英。瞳はサファイア。
ひとたび外へ出れば、金に目がない連中に捕まって痛めつけられてしまう。

「人間に、良いと悪いがあるの?貴方みたいな人しかいないと思っていたわ。」
純真で純粋なお前。
もしお前の石英の肌が壊れたら、出てくる心は水晶で出来ているのだろう。

「そうだよ。皆が私のような人間とは限らないんだ。」
「そうなのね。じゃあ、人がいない時に外に出てもいい?」
「ダメだ。人がいないなんてことは無いから。いつ、どこでお前を見つけるか分からないんだ。人間は小賢しいから。」
お前が連れ去られるなんて、考えたくもない。
そんなことになったら、私は……。


おじ様は、毎日同じ時間に外に出る。
私は外に出てはいけない、と言われるのに。
私の夢は、いつか外に出ること。
外に出て、おじ様を驚かせるの。


「今日も良いね?お前を食べさせるために必要なんだ。」
本当に?
「外に出てはいけないよ。人間は悪いやつだから。」
確かにそうね。


だって、おじ様は私の肌を割るのだもの。
私の血を抜いて、私のルビーを売りさばくの。

「私が気づいてないと思っていたの?」

私の夢は、いつか外に出ること。
外に出て、おじ様を驚かせるの。


「私は今日まで、お前を殺すために生きてきたのよ!」
そう言うために。

11/21/2025, 12:47:02 AM

『見えない未来へ』

「ねぇ、本当に行ってしまうの?」
私は今更過ぎる言葉を貴方に投げてしまう。
「うん。君が、そして未来の子どもたちが豊かに暮らせるようになって欲しいからね。だから、僕は行くよ。」
帽子を目深に被った貴方。
目元が見えないのが妙に不安で、私は貴方を引き止めたくなる。

薔薇色の紙。
薔薇というより、血の色にしか見えない。召集令状なんて。

「生きて、帰ってきてね。」
「……うん。分かっているよ。僕が帰ってくる頃には、美枝子、君も随分と大きくなっているだろうね。」
「今でも十分大きいわ。」
「はは、女学校に行く歳になったらもっと大きくなっているよ。」
大きな手が、私の頭を撫でる。
不器用な、貴方の手。

「……お国のために頑張ってください、兄さん。」
さようなら、私の唯一の肉親よ。

「うん。全てを捧げる覚悟です。お国のために。」
そして、美枝子。まだ小さくて、可愛い妹のために。
君が幸せに暮らせる未来のために、僕は征きます。

たとえ、僕の命が尽きようとも。