『見えない未来へ』
「ねぇ、本当に行ってしまうの?」
私は今更過ぎる言葉を貴方に投げてしまう。
「うん。君が、そして未来の子どもたちが豊かに暮らせるようになって欲しいからね。だから、僕は行くよ。」
帽子を目深に被った貴方。
目元が見えないのが妙に不安で、私は貴方を引き止めたくなる。
薔薇色の紙。
薔薇というより、血の色にしか見えない。召集令状なんて。
「生きて、帰ってきてね。」
「……うん。分かっているよ。僕が帰ってくる頃には、美枝子、君も随分と大きくなっているだろうね。」
「今でも十分大きいわ。」
「はは、女学校に行く歳になったらもっと大きくなっているよ。」
大きな手が、私の頭を撫でる。
不器用な、貴方の手。
「……お国のために頑張ってください、兄さん。」
さようなら、私の唯一の肉親よ。
「うん。全てを捧げる覚悟です。お国のために。」
そして、美枝子。まだ小さくて、可愛い妹のために。
君が幸せに暮らせる未来のために、僕は征きます。
たとえ、僕の命が尽きようとも。
11/21/2025, 12:47:02 AM