神埜

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8/8/2023, 11:10:05 PM

#蝶よ花よ

蝶よ花よと両親に育てられた兄は成人して直ぐに家を出ていき、今では音信不通。

僕は、両親に疎まれて育てられた。

何をやっても兄と比べられ、出来損ないと罵られた。

それなのに、なぜ僕がこんな両親の世話をしなければならないのか。

両親は「あなたのためだったのよ」と耳触りの良い言葉を並べているが、それでも僕はこいつらに虐げられた日常が思い出される。

こんなヤツらどうでもいい。

だから僕は決めた。

同じことをしてやろうって。

金は出してやる。
でもそれ以外は絶対しないし、なにかある度に罵ってやる。

それが僕からの最大の親孝行さ。

8/7/2023, 3:33:16 PM

#最初から決まってた

あなたと離れることになるなんて、最初から決まってたこと。

わかってた。分かってたはずだったのに。

こんなに悲しくなるなんて思っていなかった。

あなたは私にとって神にも近しい方でした。

あなたが言えばこの命すら投げ出す覚悟がありました。

しかし、あなたが私に命令したのは生きろということだけ。

私は最初あなたを殺そうとしたのに。

あなたもそれを理解していたはずなのに。

それでも最期の命令は私が生きること。

あなたは優しすぎた。だから命を落とした。

少しだけ待っていてください。

私はあなたの命令に従い、生きましょう。

生きて、生きて、生きて。

寿命で死んで、そしたらすぐにでもあなたの所へ馳せ参じます。

その時は私の話を沢山聞いてくださいね。

あなたが死んだ後のこの世界が紡いだ物語を。

8/6/2023, 1:52:13 PM

#太陽

燦々と太陽が照りつける。

辺りからはジージー、ミンミンとセミの鳴き声が聞こえる。

あぁ、夏だ。

僕の嫌いな夏が来た。

暑くて堪らない夏だ。

水泳なんて言う授業がある夏だ。

虫が活発な夏だ。

人が浮かれる夏だ。

ただリア充共が浮かれに浮かれる夏が来た。

ボクは予定なんかないのに。

あぁ、夏なんか無くなれば良いのに。
そう思わずにはいられなかった。

8/5/2023, 3:57:41 PM

#鐘の音

私が居る所から遥か彼方。
鐘の音が聞こえる。

何を知らせる鐘だろうか。

今は深夜。普通なら鐘がなるような時間じゃ無い。

なにかあったのか。
確認したいところではあるが、それは出来ない。

ここは山の上のポツンと建てられた屋敷。

誰かに聞こうにも、この屋敷に居る人間は誰1人聞こえていないだろうし、何も知らないだろう。

あぁ、私に自由があれば、今頃ここから抜け出して、駆けて駆けて駆けて、山の麓まで行き、何の鐘の音なのか確認しに行くのに。

口惜しい。この足が自由なら、私の体が自由なら、出来ただろうに。

仕方ない。眠ろう。何も考えず、ただ瞳を閉じて、体を休ませる。

だって私は何があろうと山の麓まで行けないのだから。

――山の上の屋敷に閉じ込められた少女は独りごち、眠りについた。彼女が次に目を覚ますのはいつになることやら。それを知るものはどこにも居ない。

8/4/2023, 10:55:03 AM

#つまらないことでも

高校生の頃、普通ならつまらないことでもお前と一緒だとなんでも楽しかった。

今日、あれが楽しかったなと思い出して1人でやってみたけど、全然面白くなくて、あれはきっとお前と一緒にやったバカだから楽しかったんだよな、と改めて感じたよ。

あれから十数年、また会いてぇなぁ。

そうは思うが叶うことは無い。

だってお前はその年の夏、今日みたいなくそ暑い日にトラックに轢かれて死んだから。

また今年もお前のとこに行く。今日のこの話を土産にな。

だから待ってろよ、いつもの時間に墓の前で。

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