神埜

Open App

#鐘の音

私が居る所から遥か彼方。
鐘の音が聞こえる。

何を知らせる鐘だろうか。

今は深夜。普通なら鐘がなるような時間じゃ無い。

なにかあったのか。
確認したいところではあるが、それは出来ない。

ここは山の上のポツンと建てられた屋敷。

誰かに聞こうにも、この屋敷に居る人間は誰1人聞こえていないだろうし、何も知らないだろう。

あぁ、私に自由があれば、今頃ここから抜け出して、駆けて駆けて駆けて、山の麓まで行き、何の鐘の音なのか確認しに行くのに。

口惜しい。この足が自由なら、私の体が自由なら、出来ただろうに。

仕方ない。眠ろう。何も考えず、ただ瞳を閉じて、体を休ませる。

だって私は何があろうと山の麓まで行けないのだから。

――山の上の屋敷に閉じ込められた少女は独りごち、眠りについた。彼女が次に目を覚ますのはいつになることやら。それを知るものはどこにも居ない。

8/5/2023, 3:57:41 PM