#目が覚めるまでに
君の目が覚めるまでにしておく事は沢山ある。
掃除に洗濯、ゴミ出しをしてからご飯を作る。
昨日は君に無理させちゃったから、少しでも労りたいんだ。
今日の朝ごはんは、君の好きなフレンチトーストとトマトとレタスのサラダ。
飲み物には、前に君が好きだと言ってくれた珈琲を淹れて、ひとつのプレートに纏めて、君の眠るベッドへ持っていく。
声を掛けると、おはようと返してくれて、朝食を見て顔を輝かせる君。
やっぱり、少し早起きして良かったよ。
君のその笑顔が僕にとって1番のご褒美だ。
#病室
病室の窓から外を眺めること早数年。
毎日毎日同じ景色ばかりで正直飽きた。
あとどれ位ここにいれば良いのだろう。
ゲームも読書も飽きたし、お見舞いに来てくれる友人もいなくなった。
最近は家族すらもお見舞いに来てくれない。
看護師さんに話しかけても無視される。
なんで?どうして?
私だって病気になりたくてなったわけじゃない。
それなのに、私だけなんでこんな思いをしなくちゃならないの。
あーぁ、1人はいや。誰か私の所へ来てよ。
それから数日後、私の部屋に誰かが入ってきた。
珍しいこともあるものだと入口に目をやるとそこには看護師さんとほかの患者さん。
看護師さんはその人に向けて言った。
「今日からここがあなたのお部屋ですよ。」
どうして?ここは個室よ。それなのに、なんで他の人を連れてきたの?ここがあなたのお部屋?違うわ!私のお部屋よ!!
看護師さんに訴えたけど、無視された。
患者さんも私を無視した。
私が見えていないかのように振る舞う看護師さんと患者さん。
どうして見えないように振る舞うの?
#明日、もし晴れたら
明日、もし晴れたらピクニックに行こうか。
なら、私は晴れたらお弁当作るね。
そんな電話が彼との最期の会話になった。
次の日は気持ちいいくらいの快晴で、私は張り切ってお弁当を作った。
おにぎりに卵焼き、彼が美味しいって言ってくれた煮物を詰めて他にも色々。
彼からもう少しで着くよという連絡が来た。
それから10分、20分、30分。
1時間、2時間待っても彼は来ない。
連絡もしたけど返事は来なかった。
玄関に座って、いつまでもいつまでも彼を待つ。
来ないのか、、。諦めて家の中に入りテレビをつけて、ニュースを見る。
ニュースでは通り魔事件が報道されていた。
そして、被害者の名前の中に彼の名前もあった。
#だから、1人でいたい
誰かと笑い合うと、1人になった時に寂しくなる、悲しくなる。
だから僕は1人でいたい。
1人で生きたい。
だけど、そんなことは無理だから、余り関わらないように、嫌われるように1人になれるように振る舞う。
そうすれば、いつか1人になる心配をしなくても良いから。
#澄んだ瞳
君の澄んだ瞳を見る度に僕は惨めになる。
だから決めたんだ。
君のその瞳を濁らせようって。
僕は君のその細い首に手をやって徐々に力を込めていく。
そして君の息は止まった。