#太陽
燦々と太陽が照りつける。
辺りからはジージー、ミンミンとセミの鳴き声が聞こえる。
あぁ、夏だ。
僕の嫌いな夏が来た。
暑くて堪らない夏だ。
水泳なんて言う授業がある夏だ。
虫が活発な夏だ。
人が浮かれる夏だ。
ただリア充共が浮かれに浮かれる夏が来た。
ボクは予定なんかないのに。
あぁ、夏なんか無くなれば良いのに。
そう思わずにはいられなかった。
#鐘の音
私が居る所から遥か彼方。
鐘の音が聞こえる。
何を知らせる鐘だろうか。
今は深夜。普通なら鐘がなるような時間じゃ無い。
なにかあったのか。
確認したいところではあるが、それは出来ない。
ここは山の上のポツンと建てられた屋敷。
誰かに聞こうにも、この屋敷に居る人間は誰1人聞こえていないだろうし、何も知らないだろう。
あぁ、私に自由があれば、今頃ここから抜け出して、駆けて駆けて駆けて、山の麓まで行き、何の鐘の音なのか確認しに行くのに。
口惜しい。この足が自由なら、私の体が自由なら、出来ただろうに。
仕方ない。眠ろう。何も考えず、ただ瞳を閉じて、体を休ませる。
だって私は何があろうと山の麓まで行けないのだから。
――山の上の屋敷に閉じ込められた少女は独りごち、眠りについた。彼女が次に目を覚ますのはいつになることやら。それを知るものはどこにも居ない。
#つまらないことでも
高校生の頃、普通ならつまらないことでもお前と一緒だとなんでも楽しかった。
今日、あれが楽しかったなと思い出して1人でやってみたけど、全然面白くなくて、あれはきっとお前と一緒にやったバカだから楽しかったんだよな、と改めて感じたよ。
あれから十数年、また会いてぇなぁ。
そうは思うが叶うことは無い。
だってお前はその年の夏、今日みたいなくそ暑い日にトラックに轢かれて死んだから。
また今年もお前のとこに行く。今日のこの話を土産にな。
だから待ってろよ、いつもの時間に墓の前で。
#目が覚めるまでに
君の目が覚めるまでにしておく事は沢山ある。
掃除に洗濯、ゴミ出しをしてからご飯を作る。
昨日は君に無理させちゃったから、少しでも労りたいんだ。
今日の朝ごはんは、君の好きなフレンチトーストとトマトとレタスのサラダ。
飲み物には、前に君が好きだと言ってくれた珈琲を淹れて、ひとつのプレートに纏めて、君の眠るベッドへ持っていく。
声を掛けると、おはようと返してくれて、朝食を見て顔を輝かせる君。
やっぱり、少し早起きして良かったよ。
君のその笑顔が僕にとって1番のご褒美だ。
#病室
病室の窓から外を眺めること早数年。
毎日毎日同じ景色ばかりで正直飽きた。
あとどれ位ここにいれば良いのだろう。
ゲームも読書も飽きたし、お見舞いに来てくれる友人もいなくなった。
最近は家族すらもお見舞いに来てくれない。
看護師さんに話しかけても無視される。
なんで?どうして?
私だって病気になりたくてなったわけじゃない。
それなのに、私だけなんでこんな思いをしなくちゃならないの。
あーぁ、1人はいや。誰か私の所へ来てよ。
それから数日後、私の部屋に誰かが入ってきた。
珍しいこともあるものだと入口に目をやるとそこには看護師さんとほかの患者さん。
看護師さんはその人に向けて言った。
「今日からここがあなたのお部屋ですよ。」
どうして?ここは個室よ。それなのに、なんで他の人を連れてきたの?ここがあなたのお部屋?違うわ!私のお部屋よ!!
看護師さんに訴えたけど、無視された。
患者さんも私を無視した。
私が見えていないかのように振る舞う看護師さんと患者さん。
どうして見えないように振る舞うの?