#明日、もし晴れたら
明日、もし晴れたらピクニックに行こうか。
なら、私は晴れたらお弁当作るね。
そんな電話が彼との最期の会話になった。
次の日は気持ちいいくらいの快晴で、私は張り切ってお弁当を作った。
おにぎりに卵焼き、彼が美味しいって言ってくれた煮物を詰めて他にも色々。
彼からもう少しで着くよという連絡が来た。
それから10分、20分、30分。
1時間、2時間待っても彼は来ない。
連絡もしたけど返事は来なかった。
玄関に座って、いつまでもいつまでも彼を待つ。
来ないのか、、。諦めて家の中に入りテレビをつけて、ニュースを見る。
ニュースでは通り魔事件が報道されていた。
そして、被害者の名前の中に彼の名前もあった。
#だから、1人でいたい
誰かと笑い合うと、1人になった時に寂しくなる、悲しくなる。
だから僕は1人でいたい。
1人で生きたい。
だけど、そんなことは無理だから、余り関わらないように、嫌われるように1人になれるように振る舞う。
そうすれば、いつか1人になる心配をしなくても良いから。
#澄んだ瞳
君の澄んだ瞳を見る度に僕は惨めになる。
だから決めたんだ。
君のその瞳を濁らせようって。
僕は君のその細い首に手をやって徐々に力を込めていく。
そして君の息は止まった。
#嵐が来ようとも
嵐が来る。
とても大きな嵐が。
僕らの生活を壊そうと、遥か彼方からやってくる。
だけど僕は負けない。否、負けたくない。
僕らの生活は僕が守るんだ。
いくら嵐が来ようとも、きっときっと守るんだ。
だって、これからは君と僕ともう1人の生活が掛かっているんだから。
#お祭り
家の外でお囃子が聞こえる。
ガヤガヤと賑やかな人の声がする。
ドン、ドドンと花火の音がする。
窓を開けると、焼きそばかたこ焼きかソースの香りが漂ってきた。
窓から身を乗り出して、下を見やると浴衣や甚平、私服にスーツ。思い思いの格好をした人の波。
久しぶりに祭りの焼きそばが食べたくなってきた。
今から行けば間に合うだろうか。
僕はスマホと財布をポケットに詰め込んで、転がるように家を出た。
焼きそばが僕を待っている!